星野源が自宅から語る、「うちで踊ろう」の真意とこれからの過ごし方

星野源(Courtesy of SPEEDSTAR RECORDS)


「おうち」ではなく「うち」、その真意

ー取材前にインスタのストーリーズでも見かけましたが、「うちで踊ろう」の英語タイトルは「Dancing on the inside」なんですよね。「“おうちで”踊ろう”」ではなく、「心の“内で”踊ろう」という想いがタイトルにも込められている。そういう発想はどこから出てきたんですか?

星野:今の状況下でも、どうしても外に出なきゃいけない人はいて。それは会社の命令だったり、あとは医療の方や保育関係や食関係、配送の職業の人だったり。今、国民全員がただ家にいたら、家にいる人たちは生活できないわけで。インフラだってそうだし。表に出て働かなきゃいけない人っていうのは絶対にいて、そのなかで「家にいましょう」とは言えないと思ったんです。その人たちに向けて言ってるつもりじゃなくても、本人たちにはそう届いてしまうだろうから。

ーそういう人たちに「外に出るな」というのは酷ですよね。

星野:そうなったら、その人たちもわかっていても辛いだろうし、しんどいだろうし。だとしたら、不要不急の外出をしてる人たちにだけ届けばいいけど、なかなかそうもいかない。そこで、もし何かやるとしたら、自分は自分の言い方で言わなければと思ったんです。僕は音楽家なので、ただ言葉で呼びかけるのではなく、詩と音楽で表現したいと考えたときに、一番最初に思いついたのが「うちで踊ろう」って言葉で。「いよう」ではなく「踊ろう」。

僕は「踊る」という言葉は「生きる」というのと同義だと思っています。「うちで踊ろう」というのは、心が躍るという意味でもある。「おうちで踊ろう」ではなく「うちで踊ろう」なのは、家にいたほうがいいと思ってる人は「うち=家」として解釈できて、外に出なきゃいけない人はその場所の「内側」や「心の内」の「うち」という解釈ができるから。

ー星野さんも「オールナイトニッポン」で話していたように、医療従事者の方々やスーパーやコンビニで働いてる人たちも、仕事から帰ってきた時に素敵なアレンジやカバーが上がっていたらその時間を楽しみにできるし、いろんな事情で踊りたくても踊れない人だって「心の内」で踊ることができる。家にいる人たちは思いついたことをどんどんやれる。そういう発想には、辛い時に見失いがちなやさしさとか、他人を思いやる想像力を感じずにはいられないのですが。

星野:ありがとうございます。……やさしさもあるかもしれないですけど、僕にとってはクリエイティブの面白さが大事です。思いやりでそうする部分もあるけど、「おうち」から「お」を取って「うち」にするだけで伝わる人が増えるってアイデアを思いついた時、面白くてしょうがないんですよね。こういう作業って自分が普段からやってることで、僕はそういうもの作りが面白くてしょうがないんです。楽しいと思ってもらえたり、グッと来たり、聴いてくれる人が増えたりするともっと楽しくなる。そこで笑顔だったりホッとしたりが増えることが僕の楽しみです。

ーRolling Stone Japanとしても、不安が蔓延してるような時代だからこそ、形や届け方は変わるかもしれないけど、音楽や映画、本、アートといったコンテンツがこれからいろんな人々に勇気や元気を与えることになるのかなと思っていて。星野さんは今、そういった文化の可能性についてどんなふうに考えていますか?

星野:うーん……。苦しい時に対抗できるのは、僕は楽しむことだと思っていて。自分のやりたいことをやったり、好きなものや面白いものを見たりする。僕は昔からそうやって危機を乗り越えてきたんです。学校に行けなくなった時はテレビのコントを見ることで乗り越え、一人暮らしを始めたハタチぐらいの頃の極貧生活も、辛い時は歌を作って乗り越えてきた。自分が好きなことや楽しいことを奪われると、人は生きていけないと思うんですよ。なぜなら、人間は余計なことをするために生まれてきたから……というより、余計なことをしちゃう生き物なので。それは想像力があるからですよね。余計なことを考えるようにできてる。昔からずっとそういう種族だったわけで。

だから、衣食住以外の余計なことを人間から奪うと、そもそも人間は人間でいられなくなる。娯楽だけじゃなくても、自分が好きだと思うものとか、なんか楽しいと思うものとか、絶対に大事だと思っています。

今はこういう状況で、そういうものとどう向き合ったらいいのか、みんなわからなかったと思う。でも、「うちで踊ろう」の広がりによって、こうすればいいんだって道を作ることができたと思う。それは本当によかったです。

自分の作品にいろんな人が重ねていくというのは、これまでにはない現象ですし、たくさんお礼のメッセージをもらったりもして、逆に僕の方がすごく元気をもらっています。自分の曲がみなさんのアイデアや楽しさだったり、好きだという気持ちでどんどん大きくなってるのが非常に嬉しいです。

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