史上最強のA&R・近藤雅信、東芝EMI時代の清志郎、渋谷系を語る



田家:さて、次なんですけど、近藤さんが選ばれた曲が2曲ありまして。大貫妙子さんの「春の手紙」か長渕剛さんの「乾杯」。2曲ともおかけしたいと思っているんですけど、先に剛さんの「乾杯」をBGMに話を進めたいと思います。長渕さんの「乾杯」は、1980年に一回アルバムで出て、1988年にもう一回アルバム『NEVER CHANGE』で再録されて、それが爆発的に売れた。そのときの担当が近藤さんだった。

近藤:そのときはアーティスト担当という形ではなく、宣伝部でいろんなプロモーションをしている中で、剛さんも一緒にしていたんですね。それまでは剛さんのアルバムをしっかり聴くこともなかったんですけど、気になっていて。拓郎さんとかも僕は好きだったし、歌がちゃんと立っている人ってすごく好きなんです。この曲は、もう1回やるって行為がとてもいいと思っていて。多分提案したのが石坂さんだと思うんですよ。石坂さんが田家さんとのご飯会とか作ってくださったじゃないですか。ふと石坂さんのことを思い出して、この曲はすごく当時思い出深いんですよ。このあと石坂さんは剛さんに「巡恋歌」のカバーをやるように強力に提案して。それもすごくヒットして。ある種の自分の作った曲をみつめて、もう1回時代にあったものとして表現していくっていうアイデアは、当時あったのかもしれないですけど、やった人も提案した人もとても美しい組み合わせだと思ったし、とにかく出来がいいですよね。剛さんとは学年が同じの同い年なんですよ。会ったときに「剛さん、どんな音楽が好きなんですか?」って訊いたら、「俺さ、ジョン・クーガー・メレンキャンプが好きなんでね」って言うんですよ。そうなんだと思って。剛さんから、「俺の帯コピーを考えてくれない?」ってなっていって、一個考えたんですね。それが「路上のファイティングスピリット」っていうコピーなんですけど、それを使ってくれたんですよ。当時けっこう会っていろいろな話をしていましたね。

田家:長渕さんがLAでレコーディングするようになったときですね。

近藤:そうですね。最近そんなにお会いすることはないんですけど、思い出深い人なんですよ。

Rolling Stone Japan 編集部

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