米フロリダ州知事、学校再開のため「全米では25歳未満の死者はいない」と虚偽発言

ドライブスルー型ウイルス検査施設で行われた記者会見で「理由は何であれ、子供たちへの影響はないようです」とフロリダ州知事ロン・デサンティスが語った。(Photo by Wilfredo Lee/AP/Shutterstock)

新型コロナウイルスのパンデミックのなか、5月の学校再開を押し進めている米フロリダ州知事ロン・デサンティス(共和党)は、「全米で25歳未満の死者はいない」と誤った情報を発言した。

米現地時間4月9日、集まった教師、保護者、政府関係者の前でデサンティス知事は、驚くべき無知をさらした。「この特殊なパンデミックに関して言えば、全米で25歳未満の死者は確認されていません。理由は何であれ、子供たちへの影響はないようです」とデサンティス知事は主張したのだ。

これはまったくのウソである。米CNNと米疾病対策センター(CDC)の報告によると、15〜24歳のうち4人、1〜4歳のうちひとりが新型コロナウイルスによって命を落としている。それに加え、米AP通信は4月8日に北東部コネチカット州で死亡した生後7週間の乳児が新型コロナウイルス陽性だったと報じた。

当然ながら、これらはすべての州知事が把握しているべき情報である。CDCが掲げるソーシャルディスタンシング・ガイドラインに反して学校を再開させようとしている州知事であれば、なおさらのことだ。

だが、デサンティス知事は今回のパンデミックをインフルエンザにたとえ、持論の正当性を訴え続けた。「フロリダでは、毎年インフルエンザで5〜10名の子供が死亡しています。どういうわけか知りませんが、今回のウイルスは65歳より年配の方にはインフルエンザ以上の危険があるようです。ただし、若い人にはいまのところ影響を与えていません。この事実を踏まえて私たちは(学校再開について)検討するべきです」。

さらに、デサンティス知事は、「年齢にかかわらず、誰もが新型コロナウイルスに感染し得るという事実」次のことを無視している。あるいは愚かすぎて気づいていないのかもしれない——。知事は、保護者や年配者の感染リスクが高いことを承知していると言い張るものの、学校再開はこうした人々への感染を防ぐためのソーシャルディスタンシングだということを理解していないのだ。

10日、米ニュー・リパブリック誌が掲載した記事によると、今回のパンデミックをめぐるフロリダ州知事の全体的な対応は問題だらけとしか言いようがない。デサンティス知事は、CDCが初期段階で発した「家にいよう」という勧告を無視した。知事はフロリダの住民が必要としている医療ニーズではなく、トランプ大統領が望んでいることに力を入れた。その結果、後に「経済を救うことでより多くの命が救われる」をモットーに掲げるアプローチを採用したのだ。そんなフロリダも、4月1日に新型コロナウイルスの感染者が7000人を超え、100人がコロナ関連で死亡すると、ようやく譲歩せざるを得なくなった。

無能だから、あるいは意図的かはさておき、新型コロナウイルスに関する誤った情報を広めている政治家はデサンティス知事だけではない。これは極めて危険だ。誤った情報がはびこるいま、有権者にとって何よりも重要なのは、心の底では有権者のことなんて考えていないかもしれない自己保身政治家ではなく、免疫学者で米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の所長を務めるアンソニー・ファウチ医師や、HIV/AIDS免疫学とワクチン研究を専門とするデボラ・バークス医師といった公共衛生当局者の意見に耳を傾けることだ。

幸い、米国の有権者は、自らの選挙区において地元の政治家が今回の危機的状況にどのように対応しているかに注目している。メディアのほとんどがトランプ大統領の新型コロナウイルス対策に注目するなか、州と地域レベルの高官が有権者をいかに危険にさらしているかに注意を払い、そのような政治家を11月の選挙で排除することが重要だ。


Translated by Shoko Natori

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