サンダーキャット×休日課長が語る、この時代に弦のベースを弾くことの意味

二人はいつもどんな練習をしてる?

課長:ところで日本に来るときいつもどんなことを楽しみにしていますか?

TC:人と会うのも、街をうろうろするのも、渋谷のセンター街で酔い潰れている人を見るのも、どれも楽しみだよ(笑)。それに、日本では常に新しいカルチャーが生まれていると思ってるので、それらをチェックするのも毎回ワクワクする。音楽、アート、人、みんなどんどん変わっていくからね。

課長:最近、日本の音楽で気になったのは?

TC:(iPhoneを見せて)これ知ってる? Answer to Rememberっていう。ちょっとコピーしてみたりしたんだけど、とても美しい作品だよね。



TC:俺からも、君に質問していいかい?

課長:え、もちろん。なんでしょう?

TC:日本で仕事しているとき、自分自身のオリジナリティと相手が求めていることって両立できるものなのかな。君はどう?

課長:うーん、どうだろう。僕自身が今やっていることは、自分のオリジナリティにつながっていることが多いから、両立できているかどうかをさほど意識することもあまりない気がします。それに、きっとどんなスタイルの音楽で演奏していても、「自分らしさ」ってにじみ出てくると個人的には思うんですよね。

TC:なるほどね。なぜそんなことを聞いたかというと、日本のカルチャーって音楽にしてもアートにしても、ものすごく綿密に考えられたものが多いから、その中で各々が「自分らしさ」を出すのって難しいことじゃないかなと思ったんだ。特に俺のようなアウトローなプレイヤーだとさ(笑)。それは音楽やアートのことだけじゃなくて、社会的にも「流れに任せて自由に生きる」みたいなことが、しにくい国なのかなとか思ったりもしたんだよね。

課長:僕自身はありがたいことに結構いろんなアウトプットがあるから、例えば今こっちのプロジェクトで試したいことができなくても、別のプロジェクトで試せるかもしれないっていう状況があって。フラストレーションが生まれにくい状況なのかもしれない。

TC:それでバランスが取れているということなのかもしれないね。ただ、そのぶん仕事量も増えるから、いずれにしても大変そうだ(笑)。

課長:あなたもいろいろなプロジェクトを抱えているじゃないですか(笑)。

TC:でも、日本みたいに決まり事というかルールは少ないからさ。それに日本人って、そもそもの「基準値」みたいなものが高い気がする。「絶対にここまではやらなきゃ」っていうふうに、自分たちに課しているというかさ。いや、それが全然悪いことだとは思ってないんだ。考え方の違いというか。それは時々感じることはあるんだよね。

課長:僕からすると、あなたや、それこそフライング・ロータス、ブレインフィーダー周辺の人たちって、ものすごく自由で大らかだからこそ絶対に辿り着けないような境地まで到達しているんじゃないかなと思って。憧れとリスペクトがあります。多彩な側面を持っていらっしゃる中でベースプレイに関連するとてもシンプルな質問があるんですが、いつもどんな練習をしてるんですか?

TC:基本はやっぱりスケール練習だな。スピードをいろいろ変えながら弾いてみて「難しい」と感じたところを集中的にやる。とにかく筋肉に覚え込ませることが大事だと思っているよ。


Photo by Kana Tarumi

課長:クリックは使ってます?

TC:若い頃は使ってたけど、今は使ってない。自分で自由にスピードを変えながらいろんなスケールを試しているよ。いつだって、めちゃくちゃ指が痛くなるけどね(笑)。

課長:なるほど。スケール練習が肝ですね。僕はデモや既存の音源に合わせて普段とは違うフレーズを試したりもしてます。

TC:ああ、それもめちゃめちゃ大事。きっと君もそうだと思うけど、たくさんプロジェクトを抱えていると、フレーズを覚えること自体がトレーニングにもなってくる(笑)。

課長:そうですね(笑)。

Translated by Kazumi Someya

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