米国最大のインディペンデントプロモーターが語る、コンサート業界の行方

「この危機が去ってコンサートが開催されるようになれば、人々はなけなしの金をはたいてでもチケットを購入するでしょう」

ー音楽業界はまさに未曾有の危機を迎えていますが、現在の状況にあなたはどのように対処していますか?

私たちは9.11もサンフランシスコ大地震も経験しましたが、規模の大きさ以外でそれらと大きく異なっているのは、危機の開始と終焉がはっきりしないということです。現在は何もかもが不透明で、それが人々にとって大きなストレスとなっています。今後数カ月の間に自分たちの生活がどう変わってしまうのか、誰も予想できていません。仕事を続けられるのか、経済がどうなるのか、何ひとつはっきりしていないのです。

それでも、私たちの会社はポジティブな見方をしています。コンサートビジネスに従事する私たちは、この危機が去ってショーが再び開催されるようになれば、人々はなけなしの金をはたいてでもチケットを購入してくれると信じています。多くのプロモーターは状況を注視しつつ、アーティストに出演料の値下げを交渉したりしています。ツアーの中止によって甚大な経済的損失を被っているのはアーティスト側も同じなのですが、自分たちのリスクを下げることばかりを考える人もいるということです。

私たちはそれとは逆のアプローチをとっています。もしもツアー業界から撤退する企業があれば、私たちは新規参入を検討するつもりです。私たちはローカルのプロモーターとして長くやってきましたが、全米ツアーやワールドツアーを企画したこともあります。現在の危機が去った時には状況が大きく変化しているはずであり、多くの人々がそれまでとは異なるオプションを検討するようになるでしょう。


グレッグ・パーロフ( Photo by Adrian Sky)

ーつまりこの業界から企業が撤退して需要が生まれた場合、あなたの会社を大きくする計画があると?

野球に例えて言えば、現在は9イニングの2回くらいにあたります。今の私の考えは、1週間〜2週間後にはきっと変わっているでしょう。私としてもいい加減なことは口にしたくありませんが、もしもレモンが豊富にあるのならば、私たちはレモネードを作ろうとするでしょう。要するに私たちは、今後コンサート業界には大きなビジネスチャンスが生まれると考えているということです。

ー夏の終わりに開催が予定されているOutside Landsは、他のフェスに比べると時間的に余裕がありますが、今はどのようにお考えですか?

人々が安心して参加できる状況でない限り、フェスを開催するつもりはありません。状況は刻一刻と変化しており、現時点では開催の可否について明言することはできません。私自身は、懸念が完全に払拭されるまでには何年もかかるだろうと考えています。市内の公園で行われるOutside Landsの開催には市の許可が必要ですが、現時点では彼らがどういった見解を示すかもわかりません。でももし開催が決定すれば、オーディエンスの反響は大きいでしょう。

ー同フェスの開催を延期する場合にはどういったことが必要か、何かしらの話し合いが行なわれていますか?

話し合いは何度も重ねていますが、現時点では予定通りの開催を見込んでいます。もし6月に開催が予定されていたならば、延期は確実だったでしょう。もし11月だったとしたら、そういった質問をされること自体がなかったでしょうね。8月の2週目というのは非常に微妙な時期で、心配していないと言えば嘘になります。開催か延期か、その決定を下すのはもう少し先になるでしょう。

ーあなたはライブ・ネイションとAEGだけが生き残るという見方を否定しましたが、小規模なプロモーターの多くが苦境に追い込まれたり撤退する可能性は高いと思われます。

そうかもしれませんが、代わりに新たな企業が登場するでしょう。空き物件が大量に発生し、そこから様々なことが生まれ得ます。現在の危機はまだ初期段階にあり、行動は慎重に起こすべきです。隣人よりも早く目覚め、より遅くまで必死に働く、そういう姿勢が求められるでしょう。この国のレストランの4割が閉店に追い込まれるといった見方にはゾッとしますが、それをビジネスチャンスだと捉え、飲食店経営に乗り出す人々が必ず出てくるはずです。

ー現在の危機収束後に、プロモーター業界でも同様の動きが起きると考えていますか? その時に、あなた自身はどのように変化していると思いますか?

ひとつだけ断言できるのは、これから事態がどうなろうとも、世界のあり方は大きく変わるということです。そういった中で企業は柔軟に行動し、発生した機会を迅速にものにすることが求められるでしょう。



Translated by Masaaki Yoshida

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