【追悼】アダム・シュレシンジャー 長年の親友が大学時代からの思い出を綴る

頭の中で彼の曲を次から次へと早回しして、いろいろな曲の歌詞を頭の中で合成している

2〜3年前のことだ。ニッカボッカーホテルで酒を飲みながら、アダムと子育てについて話したことがあった。最近『Company』のドキュメンタリーをまた観たと伝え、「お前、今もソンドハイムに似ているな。でも、今じゃお前の方が年上だ」と言うと、ウイスキーを一口すすった後、アダムは「数年後にもう一度この話をしような。きっとお前はエレイン・ストリッチに生き写しって言うと思うぜ」と言い返した。

アダムのファンたちと同じで、私もこの数日は彼の音楽ばかり聴いて、そこに慰めを求めている。そこにアダムを感じている。でも、一番明るい曲でも今は現実に調和しない暗い曲に聞こえる。アダムの音楽は多分に楽天的だった。メランコリックな曲でも、少し進むと歯ごたえの良いアップテンポのパワーコードが必ず聴こえてきた。しかし、私の仲間の体内の細胞をハイジャックしたウイルスはそこで留まらなかった。新型コロナウイルスというヤツはアダムの音楽にまで浸透して熱で犯し、アダムの細胞DNAにしたようにアダムの音楽まで書き換えている。

このウイルスによって私たちは孤独と隔離を強いられた。現在、私たちは多くを奪われている。でもアダムだけは奪わせないし、私はどうしても彼を見つけないとダメなのだ。頭の中で彼の曲を次から次へと早回しして、アダムをもう一度見つけるためにウイルスよりも先回りしようと、いろいろな曲の歌詞を頭の中で合成している。

And now you’re leaving New York.(そして今 君はニューヨークを去る)
For no better place.(ここより良い場所なんてないのに)
You’re going nowhere.(君はどこへも行けないよ)
And I’ll be there too.(僕もそこにいるだろうね)

愛する人を失ったとき、人はその人を取り戻したいと願う。そして、それが不可能だと実感したとき、次にくる衝撃は……いなくなった彼のあとを追いたいと思うこと。

I wanna sink to the bottom with you.(君と一緒に底まで落ちていきたい)
I just wanna, I just wanna, I just wanna….(そうしたい、そうしたい、そうしたい……)
I might as well go under with you.(君と一緒に落ちるほうがマシだよ)

1996年、アダムのデビュー・アルバムをファイルしようと思って、Fのセクションのフガジ、フリートウッド・マック、フォリナーの間に空間を作った。アダムと一緒にこの3つのバンドを褒めそやし評論したのを思い出した。アダムは人物や音楽に対して、これと同じように意見を述べた。最初に褒めちぎり、分析し、次に皮肉満載の笑えるコメントを言うのが常だった。そして最後は正直な意見を述べた。



アダムの1stアルバムはFセクションに入れないことに決めた。これは「もっと聴く必要のある作品」セクションで保管する。私が17歳のときに、レコード漁りをしていたアダムが手に持って「聴き足りないぞ」と行ったあの『白いレガッタ』の真横に置く。




Translated by Miki Nakayama

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