医療体制の崩壊を招くような非常時、薬物療法の現場はどうするべきか

ソーシャル・ディスタンシングが実施される以前は、メタドン治療クリニックの患者が自宅投与用に受け取る薬の量は限られていた だが一部のクリニックではそれも変わりつつある。(Photo by TY WRIGHT/The New York Times/Redux)



開業する重要性

治療施設以外にも、ハーム・リダクション支援団体も治療を支えるべく、安全に注射できる場所や注射針の交換、ナロキソン点鼻スプレーの使い方を教えるセミナーから清潔な注射器やフェンタニル試験紙の配布まで、あらゆるサービスを提供している。現在多くの団体が、安全な薬物療法の提供及びアドバイスと、COVID-19感染拡大防止に関する情報の取りまとめに動いている。その一方で、医療従事者の安全維持にも努めている。

クリスティーン・ロドリゲス氏は、「医療体制の崩壊を招くような非常事態」時に薬物療法利用者を救いたいという思いから、ボルティモアでハーム・リダクションプログラムを立ち上げたばかりだ。彼女はハーム・リダクション連合のために、国レベルでのガイドライン策定にも携わっている。患者へのアドバイスには、パイプや経鼻チュープを使い回さないこと、投与の準備前に手を洗うこと、COVID-19感染で救急サービスがパンクした場合に備えて、点鼻スプレーとフェンタニル試験紙を備蓄しておくこと、などがある。


ポートランドのPeople’s Outreach Projectが事前に準備した配布キット

感染症学者のマイク・ギルバート氏は、オレゴン州ポートランドのPeople’s Outreach Projectでボランティアをしているが、利用者が自分に必要な薬を取っていくセルフサービス形式から、事前に袋詰めした配布キットを手渡すという「弁当カウンター形式」に変更したそうだ。ホームレスの利用者が多い街で、肌寒い3月にソーシャル・ディスタンシングを実践するのは心配だ、と彼は言う。「皆さん、暖を取るためにひとつのテントに固まっています」と彼は言う。「狭い空間で寝泊まりせざるを得ない人にとって合理的でない行動を推奨するのは難しいですね」 それに加え、集団でいることは過剰摂取死の防止にも役立つ。「単独行動で、独りで寝ている人もいますが、薬物を使用している場合、社会的に孤立した状態は過剰摂取に繋がる恐れがあります」

シアトル近郊のPeople’s Harm Reductionでは、スタッフや利用者が手を洗えるよう、配布所に移動式シンクを設置した。ここでもセルフサービス方式の支給方法から変更した。「袋詰めして、全員が手袋をはめています。身体的な接触は一切避けています」と理事のシャイロ・ジャマ氏。「何が何でも開業するためです」

Translated by Akiko Kato

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