医療体制の崩壊を招くような非常時、薬物療法の現場はどうするべきか

ソーシャル・ディスタンシングが実施される以前は、メタドン治療クリニックの患者が自宅投与用に受け取る薬の量は限られていた だが一部のクリニックではそれも変わりつつある。(Photo by TY WRIGHT/The New York Times/Redux)



処方量が増えるメリット

現在ワシントン州のガイドラインでは、毎日投薬が必要な多くの患者に対し、隔日でクリニックに通院するよう推奨している。そうすることで薬の受け取りスケジュールを2つに分けることができ、1日の来院者も半分にできる。高齢者や他の病気を抱えている患者はそれぞれの「安定度合い」に応じて、最大2週間分まで薬を受け取れる。1回の処方量を医師が判断する診断も、国が新たに遠隔医療のガイドラインを制定したおかげで、セキュリティ万全なビデオ通話で行えるようになった。

「来院する必要がない人を選り分けようとしたんです」とフォティノス医師。SAMHSAや麻薬取締局(DEA)の代表者から予想以上の手厚いサポートもあって(医師曰く、「携帯の番号まで教えてくれました」)無事に選定を終えた。おかげで州内全29カ所の施設が、今も1万2000人の患者に対応できている。フォティノス医師は、規制緩和によってオピオイド治療に対する世間の見方もいずれ変わるのでは、と期待している。「もしかしたら、薬物依存症を抱えている人々への恐怖も収まるかもしれませんね」と医師は言う。「同じような制限をインシュリンや血圧の薬にも適用したら、人がバタバタ死んでいくでしょう」

ヴィンセントさんが住むノースカロライナ州でも、保健福祉省(HHS)が遠隔医療及びメタドンの処方量の規制を緩和したことで、「待合室に並ぶメタドン患者の数を減らし、かつ確実に薬が行き渡るようにしました」と、HHSの代表者は言う。それでもヴィンセントさんによれば、グリーンズボロのクリニックの前には未だに数十人が行列を成している状態だそうだ。彼女と組織のメンバーは医療従事者宛に公開書簡を送り、持ち帰り分の投薬量を増やせるよう州に要請して欲しい、と呼びかけようとしている。「他の人たちと一緒に並ばないといけなくて、列がなかなか進まなかったりすると、私のことなどどうでもいいんだと思ってしまうんです」とヴィンセントさん。「慢性閉塞性肺疾患のような併存症を抱えている人もいるんです。最も危険にさらされている人こそ、真っ先に治療するべきだと思います」

恐らく医療従事者は、患者が自分用の薬を横流しするのを最も恐れているのだろう、とヴィンセントさんは考えている。だが、薬の持ち帰りを認められた人の間では、そういうことはほとんど見られないそうだ。「今は横流しの危険なんかより、健康に対する危険の方が上です」

Translated by Akiko Kato

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