YMO、岡村靖幸らに携わってきた史上最強のA&R・近藤雅信のキャリアを辿る



田家:続いて3曲目です。SHEENA & THE ROKKETSの「YOU MAY DREAM」。1979年に出たシングルでアルバムは『真空パック』に入っておりました。作詞は柴山俊之さんとクリス・モスデル。作曲は鮎川誠さんと細野晴臣さん。プロデュースも細野さん。クリス・モスデルはYMOの「中国女」も作詞した人であった。この曲を選ばれた理由は?

近藤:僕がアルファに入ったのは大学5年の秋で、1978年の11月なんですよ。11月の末にエルヴィス・コステロが初来日公演をやったんですね。僕もすごくコステロが好きでPARCO劇場に観に行って、その時のオープニングアクトがSHEENA & THE ROKKETSだったんですよ。すごいカッコいいなと思って。翌年にSHEENA & THE ROKKETSがアルファでやることになって嬉しかったことは覚えていますね。高橋幸宏さんがコステロを観に来ていてSHEENA & THE ROKKETSを知って、細野さんに紹介したということらしいんですけど。

田家:じゃあ細野さんがプロデュースするよっていうことでアルファに来たんですか?

近藤:そうですね。鮎川さんとSHEENAさんの組み合わせも良かったし、なんとか売りたいなと思いました。

田家:SHEENA & THE ROKKETSと当時の細野さんをはじめとするYMOグループって今のイメージとなかなか結びつかないですね。

近藤:よくそう言われますし、考えたりもするんですけど、細野さんが去年に森ミュージアムでやった展覧会があったじゃないですか。風呂敷の中には色々なものがありましたよね。ジミ・ヘンドリックスとかロックンロールのヒストリーがちゃんと体の中に入っている人だから。バッファロー・スプリングフィールド的というか、ジェイムス・テイラーとかそういった影響が濃いのかなと思うんですけど、細野さんの中にはロックンロールもあったし、洒脱なエッセンスのあるSHEENA & THE ROKKETSとの組み合わせはとても新鮮でしたし、楽しかったですね。

田家:キーワードは洒脱だった。SHEENA & THE ROKKETSは、この後に出たアルバム『Channel Good』も細野さんと幸宏さんのプロデュースで、それまでのSHEENA & THE ROKKETSにない要素が加わったとしたらどんなものでしょう?

近藤:SHEENA & THE ROKKETSっていうグループ自体すごくプリミティブですし、それがすごい良かった。ロックンロールをやってるミュージシャンにとってすごく大事なポイントですから。そこにある種の今日的な要素を加えることを幸宏さんと細野さんはされたんじゃないかなと思います。ビジュアルの部分もそうですし、ポップス的な要素もあるでしょうし、ニューウェーブ的なアレンジのエッセンスもあるでしょうし。そういう要素を持ち込んでいったんでしょうね。本質的な部分は変わってないけど、見せ方や聴かせ方が変わったという風に思います。

田家:シンプルなロックンロールをやる人たちだから、それが活きたと。アルファって他にこういうロックバンドはいなかったんですか?

近藤:当時『ROCK STEADY』っていう雑誌があって、そこでオーディションをよくやっていたんですよ。原宿のラ・フォーレで決戦大会というのがあって見に行ったんですけど、そこでとてもいいロックバンド見つけたんですよ、THE MODSなんですけど。仮契約してアルファのスタジオでデモも録ったんですけどディレクターと相性が悪かったんですよ。

田家:それでEPICレコードに行っちゃったんだ。

Rolling Stone Japan 編集部

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