労働環境を見直すチャンス
こうした状況を踏まえるとストや、世界で最も裕福な男ジェフ・ベゾスの下で働く従業員たちが起こした2件のスト――1つはコロナウイルスの陽性反応が出たAmazonのニューヨークの発送倉庫で、もう1つは全国のWhole Foods従業員が起こした――をはじめとするその他の同様のストも、アメリカの近代労働運動の転換期を告げているようだ。
「この危機を受けて今誰もが関心を向けているように、国全体が労働者の安全性に取り組んだことは今までありませんでした」と言ってシュラー氏は、労働安全衛生局に感染症基準を設けるというオバマ政権時の計画を、トランプ大統領率いるホワイトハウスが事実上握りつぶした点を指摘した。
「今回の危機は人々を結束させ、共に声を上げ、共に訴えていく必要性を示したのではないでしょうか」とシュラー氏は続け、労働運動は組合員だけでなく、あらゆる労働者の味方であると強調した。「Instacartの従業員は、労働者が然るべき賃金を払われるべきだという事実を示した最新の例です。労働者は保護され、自分や家族のために確かな未来を保証されるべきです」
今回のパンデミックが全米で突然引き起こした混乱は食品業、運輸業、地方報道局の労働者――他にも数え上げればきりがない――の存在が我々のいとも脆い日常生活にどれほど重要か、過去数十年に例を見ないほど痛感させた。瞬く間に世紀の大事件となったこの危機を乗り越えるにはまだ時間がかかるだろうが、労働が人々の今の生活をどう豊かにできるかだけでなく、どうすればそれを明日、さらにその先も継続していけるかを考える絶好のチャンスだろう。
「私、定職を辞めたんです。『これが私のやりたかったことじゃない?』と思ったから」とリッチーさんは言った。「やりたいことは何かって? こういう企業のために働くことです。買い物に行けなくて困っている人の代わりに、買い出しに行くことです。自分の仕事に誇りを持っていたんです」
自主隔離の期間が終了する4月5日以降、どうするつもりかと尋ねた。
「わかりません」とリッチーさん。「全く見当もつかないわ」