ウイルス感染の危険を覚悟で働く「買い物代行者」の悲しい現実

従業員たちの要求

彼らの要求は比較的シンプルだ。Instacartは基本的な安全予防対策の費用を負担すること。ショッパーに危険手当を支給すること。アプリのチップ率のデフォルトを10%以上とすること。持病を抱えているためCOVID-19感染の危険が高いことを証明できるショッパー、もしくは自主隔離が必要なショッパーに特別給与を適用すること。これら手当の受給申請の期日を、現在の4月8日から延長すること。

「Instacartはこの4週間、COVID-19の打撃を受けた従業員への特別手当をはじめ、15以上もの新機能、健康に関するガイドライン、ショッパーへのボーナス支給、傷病手当制度、衛生用品の支給を導入して来ました」と、同社は声明の中で述べている。「COVID-19を受け、我々のチームは揺るぎない決意の下従業員の安全確保に努めて参ります。また今後数週間、数カ月かけて、さらなる改正を行いつつ、大切なコミュニティーをさらに支援して行く所存です」

ペイプ氏に言わせれば、「遅すぎるし、不十分です」

「実際、彼らは何もしてくれてなんかいません」。 彼女によれば、ショッパーが散々要求してようやく会社側が支給を約束したアルコール消毒液も、発送は4月中旬以降――――コロナウイルスの感染ピーク予想時期以降になるそうだ。

「アルコール消毒液を約束しただけでは、実際にお客様に配達するときにアルコール消毒液を使えるようにはなりません」と、ペイプ氏は苦々しく指摘した。こうしたサービスに対する思いは、月曜の抗議デモで取材に応じてくれた参加者との会話の端々にも滲み出ていた。

「私は正式には感染していないと診断されたわけではありませんが、今日にでも買い出しに行って、配達できることになっています」とリッチーさん――未だCOVID-19の検査結果は出ていない。「私はそんなことする人間じゃない。絶対にするもんですか」

Instacart曰く、COVID-19の感染が確認されたショッパーは、完治したと証明できるまで一時的にアプリからブロックされるという。14日間分のCOVID-19特別手当が支給されるのも、公的診断書があるショッパーか、自治体や州や公衆衛生当局から隔離を命じられたショッパーに限られる。検査結果待ちのショッパーや、隔離が公式の命令によるものではないショッパーは、基本的に働ける状態だと見なされ、補償金を受け取れる可能性は絶望的だ。

「働かなくてはならないので、周りを感染させるしか他に選択肢がない。そういう状況に追い込まれている人が大勢います」とリッチーさんも言う。

Translated by Akiko Kato

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