『エイリアン』撮影中のシガニー・ウィーバー(Photo by Sunset Boulevard/Corbis via Getty Images)

70年代、それはアメリカン・ニューシネマの傑作や、ニクソン時代の陰謀スリラー、スラッシュホラーにスター勢揃いのパニック映画、低俗なコメディーからブロックバスターまで、数々の映画が生まれた10年だった。だがその中でも特に豊作だったのが『2001年宇宙の旅』の60年代後期の幻惑的な余韻が色濃く残るジャンル、SFだ。

世間が水瓶座の時代からウォーターゲートとディスコの時代へと徐々に移行する中、恐らく混乱し、あるいはラリっていた観客の度肝を抜いてやろうというSF映画も確かにあった。だが1970年代も終盤になる頃には、ポストアポカリプスもののアクションアドベンチャーに衝撃の未来予想図、テクロノジー恐怖症の悪夢、“たられば”を描いた低予算のエクプロイテーション映画や超大作スペースオペラまで、一通り揃っていた――全部まとめてSFというジャンルに括られ、おかげでSFは映画界を根底から覆す存在となった。この時代の影響は今も最寄りの映画館に行けば一目瞭然だ。

今日のSF映画のあり方を築き上げた10年を称え、1970年代のSF映画ベスト50をカウントダウン形式で紹介しよう。映画史に残る最高傑作もあれば、正直、あの頃だったから良かったという作品もある。だがそれぞれがSFの行き先――寂れた小劇場であれ最先端のシネコンであれ――を再定義したことには間違いない。まさにSFというジャンルが、前人未到の領域へ大胆に足を踏み出した時代だったのだ。

第50位:『SFレーザーブラスト』(1978年)


カリスマ性ゼロの金髪のティーンエイジャーが、砂漠に打ち捨てられていたエイリアンの武器とネックレスを偶然発見。それを使って見境なく破壊行為に走り、モンスターへと化していく。『ミステリー・サイエンス・シアター3000』(この作品も取り上げられた)のロボットでさえ、この作品にはお手上げだった。とはいえ、宇宙人の最先端テクノロジーと出会ったことで平均的なアメリカ人が愚の骨頂を極めるという主題に、世を儚む意図があるのは間違いない。STC


第49位:『溶解人間』(1977年)


スティーヴ・ウェストという宇宙飛行士が(実に宇宙飛行士らしい名前だ)土星の環の探査から帰還した……が、ちょっとした肌トラブルを抱えていた。例えば、溶けた蝋燭の様に滴り落ちてしまうとか。それに、どうやら人肉を欲するようになったらしい。一説によれば、ウィリアム・サックス監督によるドライブインシアター向け低予算映画は、元々宇宙から化け物が来る系の映画をコメディタッチで作るつもりだったらしい。だが結局コメディの要素は排除され、ホラー映画として仕切り直しされた。実際には、必ずしも意図したわけではなかろうが、コメディとして成功を収めた。DF


第48位:『スタークラッシュ』(1978年)


「歴史に残るスペースアドベンチャー」というのが、このイタリア映画のポスターの謳い文句だ。念のために言っておくと、この映画が作られたのはどんなに安っぽい『スター・ウォーズ』のパクリも、それなりに稼げた特殊な時代だった。一世を風靡したジョージ・ルーカスの作品にどれだけあやかっているかって? 宇宙船の空中戦あり、光の剣あり、「暗黒世界同盟」からやってきた悪党ザース・アーン(咳払い)は小さな惑星ほどもある最終兵器の建設を企んでいる。クリストファー・プラマーが演じる役どころは、その名もズバリ皇帝(大きく咳払い)。子供時代にこれを見た思い出を懐かしく振り返るのでなければ、まるでプロセスチーズのようなこの作品は、誰もが銀河の遥か彼方で一攫千金を狙っていた時代の名残と見るのが関の山だ。DF


第47位:『監獄都市ブラッド』(1977年)


5人の男女――『2001年宇宙の旅』で時の人となったキア・デュリアもいる――が、1800年代後期によくありそうな辺境の町ような場所で目を覚ます。多くの疑問が浮かぶ。ここはどこだ? 自分たちはここで一体何をしている? 「監獄都市ブラッド」から逃げ出すために、なぜ人を殺さなくてはならない? 『シェーン』の悪役(ジャック・パランス万歳!)が鉛玉をぶち込もうとしているのに何か理由が? 簡潔に言えば、何もかもが見た目通りではない、ということ。西部劇とSFを組み合わせたこの奇妙な作品は、多くの点で『ウエストワールド』を手本にしており、B級ムービーらしいチープさという点では後者を越えていることも言っておこう。とはいえ、このエクスプロイテーション映画の結末は(あえてネタバラシはしないが)、この先何年もSFを席捲することになるテーマを予見していた。DF


第46位:『続・猿の惑星』(1970年)


『猿の惑星』シリーズで最もクレイジーなこの作品は、1968年の第1作を逐一再現する形で幕を開ける。時空間の歪みをくぐり抜けた宇宙飛行士たちが着陸したのは、言葉を話す類人猿が支配する未来の地球。そこで仲間の1人(ジェームズ・フランシスカス)が捕らえられてしまう。だが主人公が脱出すると、ストーリーはそこから大きく展開し、舞台はニューヨークの地下鉄のトンネルへ。そこでは第1作の主人公(チャールトン・ヘストン)が、突然変異でテレパシー能力を備え、核爆弾を崇める人間のカルト集団に囚われていた。70年代の幕開けに作られた『族・猿の惑星』は、観客がすでに知っているストーリーをさらにダークに、さらに奇妙に作り替え、70年代のSFの方向性を確立した。NM


第45位:『デススポーツ』(1978年)


他人のヒット作のひどいパクリを作ることにかけてロジャー・コーマンの右に出る者はいない。だが彼は間違いなく、自らのヒット作のひどいパクリを作ることにも長けていた。『デス・レース2000年』がそこそこヒットした後、コーマンは再びデヴィッド・キャラダインとタッグを組み、さらにチープさに輪をかけた作品で前作のヒットにあやかろうとした。今度の舞台は1000年後の未来。腰巻姿のキャラダインが、生死をかけたオートバイバトルに巻き込まれる。全てがあまりにもチープなので、さながらホームビデオのようだ。砂漠で跳んだり跳ねたり揉み合ったりというシーンも、まるで楽しく騒いでいるようにしか見えない。子供の頃、友達とビデオカメラを持って裏庭を転げ回ったことがあるなら、この作品はそのとき撮った映像とほとんど変わらない。BE


第44位:『宇宙からのメッセージ』(1978年)


『スター・ウォーズ』をパクったこの作品の戦闘シーンに見られる力強い演出は、日本の深作欣二監督(『バトル・ロワイアル』)の成せる業。お粗末な特撮や笑ってしまうほどひどいセリフ回し、魔法の種やら屈強な兵士やら極悪非道なサムライ皇帝やら意味不明なストーリーには目を瞑っていただきたい。だが独創的な衣装に始まって、酔っぱらってろれつの回らないヴィック・モローの存在感に至るまで、この作品にはどこか惹かれるところがある。公開当初さんざん酷評していたニューヨーク・タイムズ紙のジャネット・マスリン記者でさえ、その魅力を認めざるを得なかった。「深夜1時にチャンネルを回して偶然『宇宙からのメッセージ』に当たったら、荒唐無稽だと思いながらも、きっと躍動感を覚えるだろう」BE


第43位:『25世紀の宇宙戦士キャプテン・ロジャース』(1979年)


『スター・ウォーズ』の影響で、映画スタジオはこぞって成功の方程式の分析に奔走した。あれほど大勢の観客を魅了したのは宇宙への旅か、特殊効果か、はたまた古き良きシリーズものへの郷愁か? その3つ全部だと読んだ『バトルスター・ギャラクティカ』のプロデューサー、グレン・A・ラーソンは、1920年代の大衆小説のヒーロー、バック・ロジャースをTVシリーズに蘇らせた。そしてドラマに先行して映画版を制作し、NBCでドラマが放映される半年前に劇場公開した。がっしりした顎のギル・ジェラードが演じる主人公はNASAスペースシャトルの操縦士。80年代に凍結保存され、2491年に眠りから覚めると、地球と戦闘種族ドラコニアンとの争いに巻き込まれていた。至るところにディスコの煌めきを散りばめようとしているのが見て取れる――特にバックの相棒で小生意気なロボット、トゥウィキは、スタジオ54帰りのC-3POのようだ。NM


第42位:『新・猿の惑星』(1971年)


第1作『猿の惑星』で宇宙飛行士が地球に来るときに通った時空の歪みを、今度は3匹の未来の猿――コーネリアス(ロディ・マクドウォール)、ジーラ(キム・ハンター)、マイロ博士(サル・ミネオ)――が反対側へ潜り抜ける。3匹が行き着いた先は1973年。そこで彼らはまず好奇の目で見られ、次に有名人となり、最後には大衆の敵と見なされる。シンプルな立場逆転劇はシリーズに手を加えただけでなく、新たな息吹を送り込んだ。ドン・タイラー監督は陰謀と世代闘争で混迷を極めていた70年代アメリカにコーネリアスとジーラを据え、はっと驚く新たな映像を披露した。NM


第41位:『世界が燃えつきる日』(1977年)


ロジャー・ゼラズニイの小説を映画化した20世紀FOXは、核戦争で荒廃した、虫の巣食う土地を放浪する元陸軍工作員の物語が、パニック映画ファンとSFファンタジーオタク両方のニーズを満たすだろうと高をくくっていた(彼らが乗り回す超クールな武装車両にも触れたかな?)。ところがどっこい、公開数カ月前に『スター・ウォーズ』を公開した。その後の顛末はご存知の通り。作品自体は些か時代を感じるが、生き残った人間が僅かな物資をかけて死に物狂いで戦うというストーリーは、『ドーン・オブ・ザ・デッド』や『マッドマックス』といった作品を予感させる。NM

・70年代SF映画、ベストシーン50(写真)

Translated by Akiko Kato

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