ファウンテインズ・オブ・ウェインのアダム・シュレシンジャーがコロナ感染で死去、その生涯を振り返る

アダム・シュレシンジャー(Kimberly Butler/The LIFE Images Collection/Getty Images)

ファウンテインズ・オブ・ウェインの楽曲で知られる著名なソングライター、アダム・シュレシンジャーがコロナウイルスによる合併症で死去。『すべてをあなたに』『クレイジー・エックス・ガールフレンド』など、映画音楽やTV音楽の作曲も手がけた彼の歩みを振り返る。

ニュージャージー出身のパワーポップグループ、ファウンテインズ・オブ・ウェインのオリジナルメンバーで、映画やTV、舞台音楽でエミー賞やグラミー賞の受賞歴もある作曲家アダム・シュレシンジャーが、COVID-19による合併症で水曜日にこの世を去った。享年52歳。

シュレシンジャーの弁護士、ジョッシュ・グリアー氏がミュージシャンの死を公表した。シュレシンジャーは3月に入院し、検査の結果コロナウイルス陽性と判明。一時期は人工呼吸器につながれ、鎮静剤を投与されていた。

スレシンジャーはポップ界でも独特かつ多忙なキャリアを送ってきた。ファウンテインズ・オブ・ウェイン(以下、FOW)――パワーポップの陽気さに、インディ・オルタナロックの感受性を盛り込んだグループ――とともに、1996年から2011年にかけて通算5枚のアルバムをリリース。並行して別のグループ、アイヴィー(Ivy)の6枚のアルバムをリリースする傍ら、TVや映画音楽でもキャリアを築いていった。

最初に訪れたヒットは1996年。あえて60年代風のサウンドに作りこんだ「THAT THING YOU DO!」。トム・ハンクスの監督作『すべてをあなたに』に登場する架空のバンド、ザ・ワンダーズの唯一のヒット曲として使われたものだ。この曲は現実世界のヒットチャートでも好調で、シュレシンジャーはアカデミー賞最優秀楽曲賞にもノミネートされた。それから7年後、シュレシンジャーとFOWはバンドの代表曲「ステイシーズ・マム」を世に送り出すことになる。



2016年、オンラインマガジンConsequence of Soundとのインタビューで、シュレシンジャーは映画のストーリーと現実を比較してこう語っている。「この1曲でいきなり有名人になるんだ。どこへ行ってもついて回るし、何度も何度も演奏しなくちゃいけない。それが自分の代名詞になるんだ。だけど常に新しい気持ちで、一生懸命にもならなくちゃいけない。おかしなものだよね……本当、嬉しい悲鳴だよ。『THAT THING YOU DO!』以前は、僕が書いたものは誰一人知らなかった。それが1曲ヒットして、数年後にはもう2~3曲がヒットした。ソングライターを目指していたばかりのころは、誰もが聞いたことのあるヒット曲を代表作として挙げたくてたまらないからね」

「アダム・シュレシンジャーはポップミュージックの作曲を、もっとも優れた高みに昇華させた」と、ジャック・アントノフも記している。「彼が活躍した時代に生まれることができて、光栄だ」

「なんてこと。アダム・シュレシンジャーはあんなに才能にあふれていたのに」と、コメディアンのキャシー・グリフィス。「彼は親切にも、私のトーク番組『KATHY』のテーマソング『I’ll Say It』を書いてくれたの。私がレコーディングブースで格闘しているときも、辛抱強く、順を追って指導してくれたわ。とある土曜日、小さな自宅のスタジオで、私のために演奏してくれたこともあったわ」

「FOWとしての活動はもちろん、数々の賞を受賞したTVや映画、舞台音楽にいたるまで、何百万人というファンがアダム・シュレシンジャーのほとばしる魅力を目の当たりにしてきました」と、ニュージャージー州のフィル・マーフィー州知事もこう述べた。「ニュージャージーの音楽シーンは、惜しい人物を亡くしました」

Translated by Akiko Kato

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