恐怖による子どものコントロール 社会でのサポートが求められる体罰防止

2018年、カナダの研究者たちが「88カ国の調査を踏まえた体罰禁止と若者の暴力の関係」という論文を発表しました。これは、経済的に所得の低い国から高い国まで、11歳から25歳の若者約40万人を対象に行なわれた調査です。そして「家庭と学校の両方で体罰を禁じる法律がある」「学校で体罰を禁じる法律がある」「体罰を禁じる法律がない」の3つに分け、過去12ヶ月間に暴力を振るったことがあるかを調べました。すると、法律があればあるほど暴力が減っていくこと、そしてそれは国の経済力とは関係がなく、国が貧しくても体罰を禁じている国は暴力性が低く、豊かな国でも体罰を容認している国では暴力性が高い傾向があるということがわかったのです。ちなみに、特に男性の暴力が少なかったのは1位カンボジア、2位ミャンマー、3位マラウイ、女性では1位コスタリカ、2位タジキスタン、3位中国、という結果でした。この調査には日本が含まれていないのですが、法律によって体罰を禁止することには暴力性を抑える効果があるようです。

また、16万927名の子どもたちの、過去50年間の75の研究を使用したメタ分析では、お尻を叩くという軽い体罰も、「低い規範の内面化」「攻撃性」「反社会的行動」「外在化問題行動」「内在化問題行動」「心の健康問題」「否定的な親子関係」「認知能力障害」「低い自己肯定感」「親からの身体的虐待のリスク」「大人になってからの反社会的行動」「大人になってからの心の健康問題」「大人になってからの叩くことへの肯定的な態度」という有害な結果と関連することが明らかにされました。

これらだけでなく、体罰が、子どもや大人、そして社会にとって有害であるという科学的な証拠はかなりの数存在し、250以上の研究で関連性が論証されています。一方で、 体罰のメリットを立証している研究はありません。厚生労働省が作成した「愛の鞭ゼロ作戦」というリーフレットでは「一見体罰や暴言には効果があるように見えますが、恐怖により子どもをコントロールしているだけ」と断言し、厳しい体罰によって脳の前頭前野(社会生活に極めて重要な部位)が減少し、言葉の暴力によって聴覚野が変形してしまうと警告しています。

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