UK音楽シーンにおける、2020年の新たな地殻変動を読み解く

スピーディー・ワンダーグラウンドとダブリン・シーン

話は前後するが、南ロンドンシーンといえば、プロデューサーのダン・キャリーが立ち上げたレーベル、スピーディー・ワンダーグラウンド(Speedy Wunderground)の存在も見逃せない。同地のローカルな若手をいち早くフックアップし、主に200枚限定の7インチシングルやコンピレーションで紹介しているこのレーベルは、先に紹介したブラック・ミディやスクイッド、ブラック・カントリー〜らをいち早く取り上げてきた。

ちなみに、すべての録音は南ロンドンにあるダンのスタジオで、彼のプロデュースとエンジニアリングによってなされるという。まさにインディペンデントとDIYを地で行くその態度は、初期ラフ・トレードやチェリー・レッドなどを思い起こさせ、UK音楽文化の伝統を受け継ぐ姿勢に惚れ惚れしてしまう。


2019年のコンピレーション『Speedy Wunderground - Year 4』にはブラック・ミディ、スクイッド、ブラック・カントリー、ニュー・ロードなどのほか、フランツ・フェルディナンドのアレックス・カプラノスがオール・ウィー・アーの楽曲に参加。

そんなダン・キャリーは昨年、現在アイルランドの最重要バンドと言っていいフォンテインズ・D.C.を手掛けている。同国の伝統を受け継いだ複雑な詩作、勢いまかせのポストパンクサウンドとグリアン・チャッテンの吐き捨てるような歌を枯れた音で封じ込めたアルバム『Dogrel』は、ガーディアン紙が5つ星をつけるなど大いに絶賛された。

フォンテインズのみならず、首都ダブリンではザ・マーダー・キャピタルジャスト・マスタードといった個性的なロックバンドが再び現れ始めている。2010年代中盤に登場したガール・バンドが火付け役になったとも言われており、ダブリンシーンには今後も注目したい。



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