フライング・ロータスも魅了、リトル・ドラゴンのユキミが語る「変人バンド」の新境地

―今回は、ポップソングのフォーマットにこだわらずに非常にアブストラクトな表現もしています。空間そのものに語らせるような曲も目立ちますし、どんな考えに基づいてサウンド作りにあたったんでしょう?

ユキミ:自分たちがこれまで聴いてきた音楽の集積、みたいな感じね。ミュージック・ラバーとして、いろんな要素を取り込んでいこうとしたし。あと、さっき言った曲の作り方そのものが私たちにとっては実験的だったから、それが表れた部分もあると思う。曲が変わっていくことを恐れずに、全員が関わって作ることで、結果的にフォーマットからはみ出すことにもなったんでしょうね。



―非常に内省的な歌詞のインスピレーションについて話してもらえますか? 人生において大きな変化の渦中にあったことを匂わせます。

ユキミ:色んなことがインスピレーションになるけど、やっぱり自分の人生で起きたことが大きいと思う。難しい時期を通過して、悩みを抱えたりしながら、それが自分を振り返る結果にもなったし、そこから新しく開けていくこともある。その気持ち自体がインスピレーションになったの。私だけじゃなくて、4人それぞれが人生で新しい局面を迎えたりもしていたから。

―『New Me, Same Us』というアルバム・タイトルに込めた想いを教えて下さい。

ユキミ:タイトルには様々な側面があるわ。例えば今言ったような、私自身のパーソナルな想いでもある。私はもう10年前の自分とは違うって感じているの。色んなことが変わったから。でも、ユキミ・ナガノのままでもあるでしょう? それと同じでバンドとしても、始めた頃と比べると、自分たち自身も周りの状況も全然違っているんだけど、やっぱりリトル・ドラゴンでもある。ひとりひとりが変わっていても、バンドとしては依然として存在し続けているし。作っている音楽もそう。変わりながら、リトル・ドラゴンとしてあり続ける音楽でもあって。その感覚って全てに通じると思うの。もっと大きな意味で言うと、たとえ私たちが死んでいなくなったって、この世界、この宇宙は同じように存在し続ける。変化しているけど、同じものでもあるのよ。

―そんなリトル・ドラゴンは四半世紀近く同じメンバーで活動しています。以前あなたは、「私たちはみんな変人なんだけど、仲間を見つけて、一緒にひとつのバブルの中に居場所を見つけたの」と4人の関係性を説明したことがありますが、それは今も変わらない?

ユキミ:私たちは家族みたいなものだから、いつでも仲がいいわけでもないのよ(笑)。もちろん今でも“変人”なんだけど、同時に年をとって、それぞれほかにも責任ができて、昔とは違う部分もある。ヘンなことして遊んでばかりもいられないし、バブルの中にずっといるわけにもいかないから。でもお互いに昔から知っているからこそ、尊重し合っている。バンドとして一緒に変わっていく部分もあるし。それが一番大事かな。


Photo by Mous Lamrabat

―ジャケットを手掛けたヨハネス・ナイフォルムは同じヨーテボリ出身のアーティストで、彼も長年の仲間ですよね。

ユキミ:ヨハネスは昔からの友だちで、今回のアルバムで私たちが表現したいコンセプトを十分理解していたから、それを彼なりに解釈してもらったのよ。私たちの最初の2本のPVを監督してくれて、映画監督としても活躍しているんだけど、アートに対してすごくシリアスなところが好きなのよね。「これをこうしたら受け入れられるんじゃないか」みたいなことは一切考えずに、自分が表現することに対して厳しいし、真剣なのね。そこを信頼している。多分このジャケットの絵は、ひとつの宇宙を表しているんじゃないかな。ひとつの世界を。で、アナログ盤を見てもらうと分かるんだけど、中を開くとその世界がさらに広がっていて、続きがあるのよ。

―最後に、2014年のサマーソニック以来、来日が実現していませんよね。ぜひまた帰って来て下さい!

ユキミ:私も日本に行きたい! ライヴで行くのがすごく好きな場所のひとつなの。日本にリトル・ドラゴンの厚いファン層があるってわけじゃないと思うんだけど、熱心な音楽好きが大勢いて、どんなに小さい会場でも耳を傾けてくれる。真剣に私たちの音楽に向き合ってくれる感じがするのよね。だから、また近々日本に行きたいわ。




リトル・ドラゴン
『New Me, Same Us』
発売中

〈収録曲〉
01. Hold On
02. Rush
03. Another Lover
04. Kids
05. Every Rain
06. New Fiction
07. Sadness
08. Are You Feeling Sad?
09. Where You Belong
10. Stay Right Here
11. Water
12. Let Me Know *Bonus Track for Japan

https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10811

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