ASKAが語る作詞論 言葉ではなく「フィーリング」を大事にする理由

ASKAが伝えたい「気持ち」

―その過去の経験から始まって、歌の部分では<今 僕たちは愛に気づいてる>と現在の気持ちを謳っていますね。

ASKA:僕が伝えたかったのは、まさにそこの部分なんです。言葉って変わっていくものです。そもそも、人類が誕生した頃、言語は一つしかなかったと言われています。それが今や地球上に7000言語ぐらいあるんです。で、この7000言語の中身もおかしいわけです。例えば、日本語から何かの言葉に変わったとしたら、一つ一つの言葉が違うだけで、文法的な並びは一緒なはずです。だけど世界の言語は文法もバラバラです。一つの言語から始まったのに、文法まで変わってしまうっていうのは絶対おかしいんですよ。で、未来の人に向けて自分たちが伝えられるのは何かなって考えた時に、言葉ではないなと。気持ちだなと。それで僕は“愛”という言葉を使ったんです。その“愛”を自分たちは知っていると、もう気づいていると。これをメロディに乗せたんです。で、ここは映画『未知との遭遇』と繋がるんですけど、あの映画で地球外生命体とのコンタクト方法は、タ〜ラ〜リ〜ララって音だった。その音は12個しかないわけで、12個の音を組み合わせて、気持ちを伝えていく。それをヒントにその曲を書いてみたんです。

―なるほど。言葉は決して普遍的なものではないので、時代を超えて伝えられるのは、愛に気が付いたという普遍的ともいえる気持ちを未来に向けて歌っているんですね。

ASKA:そうですね。今の自分が未来の人に向けて歌っています。しかも、そういう歌って振り返ればそうそうないんですよね。大きなテーマですから。わずか100年前の人のことを僕たちは誰も知らないわけです。当然、何百年って経ったら僕たちのことなんかもう全く知らない人たちがこの星には暮らしています。そういう人たちに伝えることができるのは、今の言葉ではなく「気持ちだ」と。そんなことをふと思いましたね。「僕たちの愛は届いているだろうか?」と。

―とても壮大なビジョンの歌なんですね。面白いのが次の曲「忘れ物はあったかい?」では、過去のことを歌っています。ASKAさんの中で未来に想いを馳せる曲と、過去に想いを馳せる曲がありますが、どちらの方が書きやすいとかありますか?

ASKA:僕は過去も現実も未来も全部同じようにあります。それは楽曲でより分けてないです。でも今をくぐり抜けていく、今を生きるということが一番のテーマかもしれないですね。ちなみにこの「忘れものがあったかい?」は提供曲なので、自分のことを歌っているわけではないんです。

―「未来の人よ」の壮大な曲がある一方で言葉遊びのような歌詞の曲もありますね。M7の「イイ天気」には剣道好きなASKAさんらしく<コテ・メン・ドウ>という言葉が出てきます。

ASKA:コテ・メン・ドウ、そして本当はその後はツキなんですけど、ツキを好きに変えたんです。この歌には<古い自分と戦え>っていう歌詞が出てくるんです。「戦う」って言葉は、今、剣道を再開した僕とっては、単純に剣道と直結します。本当は「戦い」ではく「鍛える」ですけどね。そこは歌詞の面白さ。自然にコテ・メン・ドウが出てきました。

―M9「じゃんがじゃんがりん」はどういう意味なんですか?

ASKA:じゃんがじゃんがりんは、曲を作っている時に何気なく出てきた言葉です。普段はラララでやるんだけど、その時はじゃんがじゃんがりんって出てきたんです。それがすごくキャッチーだったので、YAH YAH YAHやラララと一緒で、もうフレーズとして残そうと思って。なので、そこには何の意味もないんです。声という楽器のフレーズとして受け止めてください。


Courtesy of DADA label

―その言葉に呼ばれるように軽快な歌なんですが、歌の途中にポーンと<our future is uneasy>と出てくる。なぜあえてしかも英語で意味深い言葉を入れたのですか?

ASKA:この楽曲を作ったのは、もう7年前ぐらいなんです。その頃は温暖化まっしぐらの状況だった。だけど温暖化の次に何が来るかは知ってたんです。実は、地球は灼熱と極寒を繰り返しているだけなので。ちょうど灼熱から極寒に移る、人類が生きられるだけの温度の時に我々は文明を作ってるだけなんです。だから、<うだる 溶ける首都がうだる>と歌い、次のフレーズでは<冷える 街がキンと冷える>と歌っているんです。で、そこの対比を出しとおいて、でも結局一番世の中がおかしくなっていったのは、すぐ隣の人が怖い、危ないかもしれないという状況です。最近は満員電車の一両に一人は必ず変な人がいると聞きます。街の中でも普通の顔して歩いている人が怖い人かもしれない。そういう時代背景を考えると未来は決して簡単じゃない。でもそれをストレートに書くと生々しいから英語にしただけです。

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