グライムスが明かす、自身の素顔と超越したヴィジョン「カオスこそが私のブランド」

グライムス(Photo by Charlotte Rutherford for Rolling Stone)

8月18日(金)に幕張メッセで開催されるソニックマニアで、DJとして出演するグライムス。「GRIMES Live From the Future」と名付けられた、米ローリングストーン初となるデジタル版カバーストーリーを完全翻訳。先頃リリースされた『Miss Anthropocene』でも話題を集めた彼女が、生い立ちやカルチャーへの好奇心、イーロン・マスクとの交際、ミュージシャンを超越した将来像などを語った約15000字の超ロングインタビュー。

木曜の午後1時45分、起きたばかりのクレア・バウチャーは寝覚めの悪さを感じていた。妊娠26週目に入り、黒のマーベル・コミックのTシャツに覆われたお腹は大きく膨らんでいる。昨夜彼女は、お腹の中の赤ちゃんが逆子の状態であり、「肝臓に足が触れるのをはっきりと感じた」という。

現在31歳のバウチャーは、20歳の時に思いつきでグライムスと名乗り始めた。パフォーマンスのみならず、作曲からエンジニアリングまでを自身で手がける彼女は2010年以来、今世紀屈指の近未来的でカテゴライズ不可能なインディーポップを生み出し続けている。彼女は最近、オフステージでは「c」と名乗っている。古い友人たちには馴染み深いその愛称を使い始めた理由は、クレアという名前をもともとあまり気に入っていなかったこと、それが光速を示す記号であること、響きがSFのスーパーヒーローっぽいこと、そして何よりただ気が向いたからだという。彼女はレッテルに対して人一倍敏感だ。「歌手って言われるのが嫌いなの」彼女はそう話す。「すごく不十分な感じがするから」

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グライムス 2020年2月12日、カリフォルニア州ロサンゼルスで撮影
Photographed and directed by Charlotte Rutherford for Rolling Stone. Produced by Luke Miley at LMC Worldwide. Set design by Natalie Falt at Lalaland Artists. Tailoring by Kimberly Mackin. Hair by Chanel Croker for DNS. Makeup by Natasha Severino at Forward Artists. Nails by Vanessa McCullough. Styling by Brett Alan Nelson for The Only Agency. Dress by Balmain. Crown by Chris Habana. Shoes by Puppets & Puppets. Bracelet and ring by Lynn Ban.(Photo by Charlotte Rutherford)

典型的な夜型人間である彼女は、毎日ディナーの時間くらいまではダラダラと過ごし、朝9時頃に就寝して夕方5時頃に起きるパターンが多いという。「妊娠が発覚した時、まともな時間帯に寝る習慣をつけようと努力したんだけど、逆にすごく調子が悪くなっちゃったの」彼女はそう話す。毎日の運動や、医師から推奨された栄養食シリアルの摂取など、彼女はできるだけ健康的な生活を送ろうと努力しているが、夜型の生活習慣は維持しており、母親になってそれが変わってしまわないことを願っているという。「私の子供もきっと夜型人間になるわ」彼女はそう話す。「現時点でそうだもの! 日中はじっとしてて、夜になると動き出すの」

子供が生まれれば嫌が応にも朝方の生活を強いられることを指摘すると、彼女は呻くようなため息をついた。「もうなるがままよ」彼女は自分を励ますようにそう言った。「私は人生とキャリアを棒に振ろうとしてるのかもね!」彼女は大声で笑った。

Translated by Masaaki Yoshida

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