URC50周年ベストから、それぞれの記憶の中にずっと生きている風街

・なぎらけんいち「葛飾にバッタを見た」


『URC 50th ベスト・青春の遺産』DISC2「旅と街のうた」12曲目。なぎらけんいちさんで「葛飾にバッタを見た」ですね。73年の同名のアルバムのタイトル曲です。傾いたアパート、今柴又にあるかな? 高校生のとき、「中津川フォークジャンボリー」のステージに飛び入りしたのがなぎらさんなんですね。この曲を書いたときは20歳になったばかり。「中津川フォークジャンボリー」はプロのイベントではあったんですが、アマチュアが飛び入りができたんです。そういうアマチュアとプロの境目がなかったというのが、70年代前半。それがURCの人たちの姿勢、主張でしたね。なぎらけんいちさんの「葛飾にバッタを見た」は、下町の東京ですよ。さっきの松本隆さんが書いた「風をあつめて」というのは東京オリンピックで消えてしまった彼らの故郷の東京ですね。東京に都電が走っていた頃の幻を歌っているわけです。このなぎらさんの下町東京。傾いたアパートがあるのかなと申し上げましたけど、あの辺も今やマンションが立ったりしているわけで、東京もどんどん変わっていく。東京が変わっていくということは日本中が変わっていくわけで、日本から失われていく景色がたくさんあるということでもあるんですね。

銀座生まれ下町育ちのなぎらさんが歌った東京の後は、滋賀県出身のこの人が歌った東京です。


・加川良「東京」


もうそろそろこういう季節でしょう。いろんな地方から東京に人が集まってくる。大学とか高校とか新しい環境を東京で過ごそうという人たちが続々やってくる。たぶんこれは今も当時も変わらないと思うんですが、ある程度東京に慣れてくると、まずやってみることが山手線一周。僕らもやりましたからね。僕らは深夜喫茶というのに朝までいて、そのまま始発で山手線に乗るんです。何回もぐるぐる回るので中で寝られる。深夜喫茶で夜明かしして山手線の中で寝る。睡眠をとるという時代がありました。気がつくと周りは満員電車になっていて、通勤の人たちがつり革を掴んで冷たい目で僕を見下ろしているという、そういう視線が痛かったという時代がありました。「ああ、東京」というこの感嘆は時代を越えているんじゃないでしょうか。歌の中に出てくるウナセラディ東京、これは1964年のザ・ピーナッツのヒット曲ですね。

Rolling Stone Japan 編集部

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