URC50周年ベストから、それぞれの記憶の中にずっと生きている風街

もう1曲、柳田ヒロさんの曲です。

・柳田ヒロ「風が焦げる匂いがするだろう」

『URC 50th ベスト・青春の遺産』DISC2「旅と街のうた」9曲目。柳田ヒロさんで「風が焦げる匂いがするだろう」。ここで問題です。URCのアーティストで風のつくタイトルのあるバンドは、誰でしょう? 何つまらないこと訊いているんだと思われた方はたくさんいるでしょう。はっぴいえんどの71年の名盤『風街ろまん』。風というのは松本隆さんの代名詞でもありますね。今お聴きいただいている「風が焦げる匂いがするだろう」も作詞が松本隆さんです。オリジナルはヒロさんの72年のアルバム『HIRO』に入っているんですが、この中にはインストゥルメンタルと歌物、両方ありまして、歌ものの曲が全部松本さんが詩を書いている。松本さんはまだはっぴいえんど在籍中ですね。彼がはじめて他のアーティストのアルバムに書いたのが、この柳田ヒロさんの『HIRO』。それを改めて思うと、このアルバムは貴重だなと思います。『青春の遺産』はTHE ALFEEの坂崎幸之助さんが番組で特集してくれたんです。それを聴いていたら坂崎さんが「柳田ヒロさんとは会ったことがあるんだけど、歌を聴いたことがなかったんだよ。これ貴重だよね」と言っておりました。そういうアルバムなんですよ。このアルバム『HIRO』は、コーラスがオフコースです。まだ鈴木康博さんと小田和正さんの2人の時代のオフコースがコーラスをつけている。貴重でしょう。そして、この「風が焦げる匂いがするだろう」っていうタイトル。風が焦げるんですよ。松本隆さんにとっての風というのはとっても大事なキーワードですが、焦げているんですよ。これは私の推測になりますが、実はこの言葉にはっぴいえんどの最後、「今こういう状態なんだよ、僕らは」と込めたんじゃないかと。そう思って聞くと意味が深いです。歌詞の中に出てくる「夏の田舎道」、ということになるやはり、はっぴいえんどのこの曲ですね。「夏なんです」。

はっぴいえんど「夏なんです」


『URC 50th ベスト・青春の遺産』DISC2「旅と街の歌」10曲目。はっぴいえんどの「夏なんです」。オリジナルは71年に出た2枚目のアルバム『風街ろまん』ですね。本当に何度も申し上げていますが、これはアルバムの曲順通りなんですね。ずっと景色がつながっている。旅をするようにアルバムを聴いてもらえるのではないかと思いながら選んでみたわけですが、前半ここまでの裏テーマは、はっぴいえんどと松本隆。そういう並びでもあります。松本隆さんの詩の世界が続いていきます。松本さんは港区の生まれです。彼がよく使っている風街というのは、青山、麻布、渋谷というあの三角の点を結んだ一体ですね。でも彼のおばあさんが群馬県の出身。伊香保温泉で写真屋さんをやっていたというのが彼のもう一つの記憶の中にあって、この「夏なんです」はその頃のことを歌っています。「旅と街の歌」ははっぴいえんどをどう入れるかっていうのも一つの選曲・曲順の大きなテーマでありました。

Rolling Stone Japan 編集部

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