URC50周年ベストから、それぞれの記憶の中にずっと生きている風街

さて、次の旅はこんな曲です。

はっぴいえんど「抱きしめたい」


はっぴいえんどの71年の名盤『風街ろまん』から「抱きしめたい」。『URC 50th ベスト・青春の遺産』DISC2「旅と街のうた」7曲目ですね。さっき遠藤賢司さんの「夜汽車のブルース」のバックではっぴいえんどが演奏して、ここで本体が出てくる。順番に聴いていくと、そういう流れもお楽しみいただけるんじゃないかと思って曲を選びました。これは冬の旅ですね。窓の外は雪の銀河です。これも旅の途中で書かれているんです。途中でギターが窓の外を遠ざかっていくかのように動いていくのがヘッドホンだとお分かりになると思うんですが、その辺も凝った音の作り方をしていますね。これははっぴいえんどが岡林信康さんのバックをやっていたとき、岡林さんの東北ツアーがあって、その帰り、東京に向かっている列車の中で松本隆さんが食堂車のコースター、食堂車に乗っていたんです。夜汽車に食堂車、これですよ、当時の旅は。明け方に明るくなった外の景色を見ながら、食堂車で朝ごはんを食べる。この食堂車のコースターに詩を書いたのが「抱きしめたい」なんですね。松本さんの詞には本当に旅の歌が多いです。松本さんも夜汽車でコンサートツアーを回る経験がある、そういう年代ですね。夜汽車でツアーを回ったことがあるかどうかというのが、音楽をやっている人たちの中の世代をわける体験になるんだなと改めて思いました。次の詞も松本隆さんです。歌っているのは柳田ヒロさん「きみの町を通ったよ」。

・柳田ヒロ「きみの町を通ったよ」

『URC 50th ベスト・青春の遺産』DISC2「旅と街のうた」8曲目。柳田ヒロさんで「きみの町を通ったよ」。さっきは夜汽車でしたけど、これは電車でしたね。「黄昏と枯葉色の街」というフレーズで、あ、松本隆さんというのがわかる。この曲は柳田さんの72年のソロアルバム『HIRO』に入っておりました。柳田ヒロさんは、70年代、あまり語られることがないんですが、キーパーソンの1人ですね。彼が小坂忠さんと組んでいたバンド、ザ・フローラル。ここに細野晴臣さんと松本隆が加わって、エイプリル・フールというバンドになって、はっぴいえんどにつながっていく。柳田ヒロさんのところから始まっているという、そういう1人でもあるんですね。『青春の遺産』には彼の曲が3曲入っております。

Rolling Stone Japan 編集部

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