downyの青木ロビンが語る、結成20年目の新たな出発点「常に人とは違うことを」

downyを20年続けてこられた理由

一それにしても、3年半、裕さん亡くなってから2年ぐらいですか。時間はやっぱりかかりましたね。

ロビン:そうですね。やっと。ドラム録りが始まったのが去年の9月くらいかな。それまでほんとに、レコーディングをやるのかっていうところも含めて、悶々と悩みました。「うーん、やるのかなぁ、俺らは」みたいな空気もありつつ。

一それはレコードを作るということのモチベーション?

青木:そうですね。バンドとしてもう一回駒を進める気なのか、っていうのも含めて。

一バンドを続けるか否か、ということですか。

ロビン:どうなんでしょう。誰も言わなかったんで。「休もうか」ってことは結果的には誰も言わなかったんですけど、空気はちょっとありました。「どうするの?」みたいな。まぁ僕がバンマスなんでほんとは僕が言わなきゃいけないんですけど、どっかでまだ僕も「今構想してるこのアルバムがはたしてほんとにできあがるのか?」みたいなのもあったんで。「どう進めるの? SUNNOVAくん入れるの?」とか。メンバーほんとに固めんのか、とか、じゃあ新曲作るのか、とか。ライブだけやってるぶんにはいいんですけど、一緒に制作ができるのかどうか、そもそも制作し始めないとわかんなかったから。それで初めて「大丈夫だ。SUNNOVAくんいいね!」ってなって。それでレコーディングを進めようってなって、3月19日が裕さんの命日なんですけど、3月18日にとにかく間に合わせようっていうのが決まったんですね。「とにかく3月18日発売にしましょう、そこまでに必ず終わらせるために、みんなでもっかい一枚板になってやろうね」っていうところでSUNNOVAくんが倒れちゃったりして大変だったんですけど、まぁそれでもちゃんと最後まで漕ぎ着けてやれたんで。


Photo by Hana Yamamoto

ー今回はこれまで所属していたfelicityではなく、downyの自主レーベルからのリリースですね。

ロビン:今回は自分たちでやろうと。別にfelicityと喧嘩したわけじゃない(笑)。むしろ感謝しかないんで。今もずっとサポートしてくれてるし。そういうのがあって、条件がやっと自分の中で整ったんで、よし行こうみたいな流れでした。

一なるほど。かれこれ20年くらいdownyをやってきてるわけですが、今のバンドの状況をご自分ではどう捉えてます?

青木:単純にメンバーが今すごいポジティブなんです。コロナウイルスの影響で海外のツアーが流れちゃったりもあって、組み立ててたものが一回バラけちゃったので、またいろいろやんなきゃいけないんですけど。今年20周年なんで。せっかくだしいろいろ楽しんでやっていけたらいいなと思っていて。

一20年続くと思ってました?

ロビン:思ってませんでしたねぇ。まったく。まぁ途中で10年休んでますけど、僕らの場合は(笑)。でもどうなんすかね? 実質11年の活動で7枚のアルバムはなかなか頑張ってると思うけど。

一downyみたいな音楽だと、かなり多いほうですね。お手軽にできるインスタントな音楽じゃないのに。

ロビン:多いですよね。今、ちょうどゲネプロ中なんですけど、作った曲をもう一回リハーサルやってる最中で、すごい楽しいですね。合わせていくのもまた楽しいですし。「ライブはちょっとアレンジ変えようか」みたいなアイディアもメンバーから出ますし。

一途中お休みがあったとはいえ、それだけ長いこと続けていられた理由って何だったんですか。

ロビン:オリジナリティがあるから。このオリジナリティだけに固執してたんで、ポンと(シーンの中で)浮いてくれてるんじゃないですかね。浮いてるから、downyってバンドを知る人は、特にミュージシャンなんかは「呼びたいな」とか「一緒にやりたいな」みたいな、声かけやすかったんじゃないかな。やっぱり僕らも声かけられなかったら続けてく意味がわかんなくなる可能性があるんで。どっかで「好き」って言ってくれる人がいて、ライブ誘われたりどこか行くきっかけがあって。Afterhours(downy、MONO、envyが主催している音楽フェス)とかもそうですけど、最近だと僕は「FRIENDSHIP.」っていうサービスのキュレーターをやっていて、若い子たちの音楽を聴いて配信するサイトを手伝ってるんですけど、そういうきっかけ作りがあるのはdownyがあるからだと思いますし。うん、じゃないと、ただの音楽が好きなオッサンになっちゃうんで。僕がいきなり若いバンド呼んでライブ、フェスをすることはできなかったでしょうし。



一自分が音楽をやりたい、演奏をしたい気持ちはもちろんあったと思うんですけど、それ以上に自分が求められてる、必要とされてるという実感は、続ける際にはとても大事なものなんですか。

ロビン:……うーん、少なくとも「カッコいい」って言ってもらえないと厳しいかもしれないですね。誰かに「カッコいいっすね」って言ってもらえないと「俺何やってるんだろう?」って気持ちになるかもしれない。幸いなことに、見向きもされなかったことがなかったんで。

一あるハードコア・バンドのメンバーがね、アルバムを作ったときに、これだけの作品を作って俺はもう満足だ、これが誰にも聴かれなかったとしても全然構わない、みたいな意味のことを言ってたんです。自分が納得のいく作品を作ることが何より大事で、それが他人に届かなくても、評価されなくてもいいと。その気持ちってわかりますか。

ロビン:わかります。わかるんですけど、誰にもカッコいいって言われなかったら、多分すげぇ寂しいでしょうね。僕が曲作るときは「これはカッコいいって言われるぞ」と思っては作ってはいない。あくまで作りたいものを作って自分でカッコいいと思ってるだけ。でも、その自分の感覚はそんなにおかしくないと思ってる。カッコいいの作っていれば、きっと誰かがカッコいいって言ってくれると思ってます。ゼロじゃないというか、誰かが、絶対に。それは信じている。

一自分の感覚がズレてないかどうか。

ロビン:そうですそうです。別に誰にも聴かれなくてもオレはこれを作った、っていう気持ちはめちゃくちゃわかります。僕らも全然そうだと思うし。でも絶対誰かに届いているはずだ、とも思う。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE