downyの青木ロビンが語る、結成20年目の新たな出発点「常に人とは違うことを」

「個々の音を作り込んだ」レコーディング

一レコーディングは具体的にどうやって進めていったんですか。

ロビン:今回は、ざっと(自分が)作ってきて、そのあと具体的にプレイをどうするか考える。さっきも言ったように「ここは(周波数帯の)こういうのが足りないからこうしましょう」っていうやりとりをしたあと、今度は秋山くん(秋山タカヒコ、Dr)のレコーディングをやる。今回は全部ドラムをセパレートで録ったんです。ハットのプレイだけとかキックのプレイだけを加工してデザインされた音作りをしたいと思った。一緒に録ると、どうしても音のカブリが出るから。そういう録り方にして、もっとマスクされた音作りを一個一個やっていこうっていうのがテーマで。そうやってこまごまと録っていった感じですかね。ベースの音だけでも10パターンぐらい。

一ライブバンド的な、ノリ一発みたいなのではないもの。

ロビン:そうですね。今回は一曲も「せーの」がない。3枚目(2003年)とかに近いのかな、録り方の空気としては。ただそれを生バンドでやることに意味がある。最終的にライブでやれる環境に持っていく。ライブで実際に叩けなかったら意味がないから。そしたら打ち込みにしちゃえっていう話にもなるんで。そこはプレイヤーであることが必要だし、ハットだけでもやっぱり人間のやることなんで訛るところがある。それが残せてるから、独特なリズムになってるというか。マッチョ(仲俣和宏)のベースもライブとは違う音作りで何度もやりとりした結果、シンセベースのまま録音して、ライブでベースでやるとこうなるというのを確認しながら作り込んで行きました。

一バンド全体のノリとか勢いを重視するよりも、個々の音を作り込んで音を立体的に配置していくほうが、今回のアルバムには合っていた。

ロビン:そうですね。ライブで一回やってる曲が多いんで、その時にノリというか「ここはもうちょっとベースを突っ込んで弾いたほうが回る感じがするんじゃないか」とかもやりきってるんで。そこは見えてたっていうのはあるかもしれないですね。見えてるから全部バラ録りする淡泊さは、うまく隠せてるんじゃないかなぁという気がします。

一いつもライブで先にやるんですか?

ロビン:いや、珍しいです。ライブで先にやってるっていうのはけっこう珍しいパターン。

一それは裕さんの件があるから、ライブで先行して作っていったということですか。

ロビン:そう。なのと、2年間くらいブランクが空いちゃってるんで、何かやっとかないとさすがにバンドとしても飽きちゃうんで。「次のライブは2曲新曲をやるぞ」みたいなモチベーションが必要だった。あとは作んなくなっちゃうんですよ、どっかで誰かが忙しいと。先に進めるためにも、やっぱライブで一回やっとこうって。

一そうすることで楽曲のイメージは掴みやすくなる?

ロビン:そうですね。僕らみたいに距離が離れた環境でバンドやってると、みんなが同じ方向向いてないと進まなくなっちゃうんですよ。たとえば「今週はずっとこの曲を作ろう」ってやらないと、誰かが海外行っちゃった、誰かがツアー入っちゃったって、2週間経っちゃうともう感覚が(薄れる)。「えっとどこまで進んだっけ?」みたいな感じになっちゃうんで。そこを避けるためにも、ピンポイントでライブに向けて一回ちゃっと作って、ライブでやったけどこうだったからこうしよう、じゃあ次のライブではこうしてみよう、とか。極端にいうと「コントラポスト」っていう曲とか、実は最初にライブでやったときは最後のアルペジオをギターでやってたんですよ。僕がギター弾いてたんですけど、ピアノ弾いてギター弾いて、立ったり座ったり自体も格好悪いし、だったらもうこのままシンセにしようかなぁとか。


Photo by Hana Yamamoto

一実際にメンバー全員が顔を突き合わせてレコーディングする場面はあったんですか。

ロビン:ないです。必ず誰かがいない。僕とSUNNOVAくんは基本メールマターなんで。あと秋山くんも……あー、一回だけあったかな、最初のドラム録りだけ全員いましたね。みんなでああでもないこうでもない、「いいねぇ」とかやってました。レコーディングは基本メールのやりとりなんですけど、特にドラムは、秋山くんが打ち込みでやってくるわけじゃないんで、ちゃんとスタジオにいる時に録らきゃいけない。たとえば秋山くんがスタジオにいて、僕はその時間(沖縄の)家にいるんですよ。で、電話とかで生で叩いたのをそのままもらって聴いて、「ここ、キックはこっちがいい」とか。あとこっちで打ち込み直して「これはどうですか?」「ここ、どうしても2発目は弱くなっちゃうから、ロビンが言ってるグルーヴ出ないよ?」とか。

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