downyの青木ロビンが語る、結成20年目の新たな出発点「常に人とは違うことを」

コンセプトは「現代のプログレ」

一前のものを超えないと意味がないって最初におっしゃいましたけど、超えるために何が一番必要だったんでしょうか。

ロビン:何ですかね? まぁいつも過去の自分たちのアルバムを超えようと思って、毎回毎回そのつもりでやってるんですけど。20年一緒にいたバンドのメンバーがいなくなるのは大きいですよね。あと、亡くなる前の本人に冗談で「僕がいないときに一番カッコいいアルバム作んないでね」って言われてたんで(笑)。「いや絶対作るから」って笑いながら返してましたけど、それをちゃんと明確に作品にできたらいいなっていうのが一番。んー、なんでしょうね、これをやったから前を超えた、っていうのは何ともわかんないですけど。でもさっきも言った立体感のある音像で「いわゆる現代のプログレバンドみたいなことがやりたいな」って、明確なキーワードを初めて僕がメンバーに(伝えて)。今まではそういうのはなかったんです。「僕らがカッコいいのを作るとdownyになる」ぐらいのニュアンスでいたものを、もうちょっと明確に「現代のプログレッシブ・ロックみたいなことをやりたい」って伝えきれたのかなって感じはありますかね。



一「プログレッシヴ・ロック」って、ロビンさんにとってどういうものなんです?

ロビン:もう、イエスなんですけど(笑)。イエスとか、もっと古いクリムゾンとか、ああいう、あの時代にあれがちゃんとポップスとして成り立ってた、みたいな感じのが作りたいなって。ポップスなんですよあの曲が、あの時代は。凄いことですよね。

一「ミュージック・ライフ」の人気投票でELP(エマーソン、レイク&パーマー)が1位だったりしたこともあったわけで(1975年)。

ロビン:そうそうそう。僕も母が普通に聴いてたんで、僕の中ではけっこう普通のことだったんです。でも周りは誰も聴いてなくて、中高生のとき。「なんで? わりと歌えるよ」みたいな。そういう感覚を持った洋楽っていう印象が僕の中にあったんですけど。そういうシンプルなモチーフですかね。


イエスのライブ映像作品『Yessongs』より、1972年のパフォーマンス

一音楽的に非常に凝ったことをやりながらも、ポップに聴かせる、くらいの意味合いで。

ロビン:そうですね。あとループにちょっとこだわりすぎてたんで、今まで。展開の幅がどうしても(狭くなる)。もちろんそこがカッコいいと思ってやってたんですけど、今回はループ、ダンス・ミュージックっていうところから離れて、もうちょっとプログレッシブな展開を。

一あのループ感がdownyの現代性に繋がってたと思うんですけど、そこから離れようと思った?

ロビン:んー、上手く使おうって感じですかね。離れすぎず。結果、けっこうループしてますけど、そこは展開力とかコード進行でもうちょっと持っていけないかなっていうのが。それこそSUNNOVAくんがいることによる、ギターとかでは補えない周波数帯ですね。そういうのの持っていき方とか。そこはSUNNOVAくん、やっぱトラックメーカーなので、バッと周波数見て「ここ足りないんで、ここ僕作ってきまーす」みたいな。バーンと持ってきてくれたりするんで。

一そういう発想は今までなかった?

ロビン:いや、意識してやってましたけど、パソコンできっちり「ここがない」とかいうのはなかったですね。図で出してくれるんで。「ここが今ちょっとないんで、ここに歌入れてみていいですか」とか。「あぁ入れてみよう、入れてみよう」みたいな。

一特定の周波数帯が足りないっていうのは、アレンジした結果気付くものなんですか。なんとなく物足りないな、とか。

ロビン:そうですね。あるいは、わざと空けておく。展開のために。イントロがあって、Aと言われる部分を敢えて抜いてこれを足す、みたいなのはもちろんやる。単純に「低音がないな」と感じることもある。それを楽器で埋めちゃいたくないんですよ。足し算をしたくないんで。単純に「そこにないからプラス」っていうのは、downyの手法としてはカッコ悪いって感覚なんで。そこを補うための同じ一個の楽器の振り幅は、やっぱりPCなんでやりやすい。そういうのは(SUNNOVAが)すごい理解力を持ってくれるんで。今まで逆にいうと、ギターだと「これを出してるとこれは出せないよ」とか「(音が)団子になっちゃうよ」とか「僕のギターと被ってるよ」とか。そこをさらに避けたりできるっていう面白さが今回はあって。そこに立体感が足せる、球体のような音楽が作れるようになったんじゃないかなって思います。

一立体感というのは、具体的にどうやって出していったんですか。

ロビン:んー、レイヤーの重ね方ですかね。やっぱりギター2人だけだと、どんだけ音を重ねてもレイヤーの層ってエフェクティブに聴こえちゃうじゃないですか。それがシンプルにダサいというか。そこを他の楽器で補う。キックとかも今回エンジニアさんがこだわってくれて、マイクの打点だけちょっとズラしたりして。立体感というか、音の作り方とか、アレンジの状態で最初からここに来るようにしようっていう。スタジオではできない、こうやっては作れない感覚というか。

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