downyの青木ロビンが語る、結成20年目の新たな出発点「常に人とは違うことを」

downyの青木ロビン(Photo by Hana Yamamoto)

downyの3年半ぶりのニュー・アルバムがいよいよリリースされた。いつもの通りタイトルのない〈第七作品集『無題』〉と呼ばれる作品は、オリジナル・メンバーである青木裕(Gt)の逝去後初のアルバムであり、かつ新メンバーとして加わったSUNNOVA(Sampler, Synth)が参加した初のアルバムでもある。生前の青木が残したギター音源をフィーチャーした楽曲も収められたこのアルバムは、これまでのdownyの集大成でもあり、かつ新生downyの出発点でもある。立体的、SE的な音をうまく使い、downyらしい構築性の高いサウンドと、攻撃的でカッティングエッジな側面が巧みにバランスした、彼らの最高傑作とも言える作品だ。リーダーの青木ロビン(Vo,Gt)に話を訊いた。


一「第七作品集」、むっちゃ良かったです。

青木ロビン:良かったですか、ありがとうございます。頑張りました。手応えはありますし、(前作を)超えられるな、みたいな感じを得られたので、レコーディングに入ったみたいな感覚もあったので。

一前作から今作に至るまで、メンバーのことも含めて大きな変化がありました。いつごろからアルバムの構想が?

ロビン:2年前かな。(青木)裕さんの病気が発覚して、余命1年って言われて。元気なうちにアルバムを作ろうっていうのが一応最初のきっかけです。で、今回シングルを出した「砂上、燃ユ。残像」っていう曲は、ほんとは2018年3月19日、彼が亡くなる当日にやったライブで演奏する予定だったんですよ。いつ入院になるかわからなかったんで、とりあえずアルバムを作っていこう、みたいな、きっかけ作りの曲だったんですけど。急変して亡くなってしまって、(ライブで)やることはなかったんですけど。

ーなるほど。

ロビン:メンバーが代わって「前よりも良くなくなった」っていうのは絶対しちゃいけない。裕さんもそれを気にしていたし。だから、超えなきゃいけない。それはすごく意識して作りました。



一裕さんとしては、すでにある程度覚悟していたということですか。

ロビン:本人はもちろん死ぬつもりなんてなくて「治すから大丈夫」って言ってたんです。なんなら「調子がいい」って言ってたんですよ、数日前まで。ほんとに急に「お腹痛い」ってなって、急にバタバタと入院してという感じで。ギターも録り終えていたんですよ、一応。僕らもともと、作り込んでからライブするんで。僕のPC上にはもう裕さんのギターがあって、構成を変えたり僕が歌を入れたりしていて、もうこれで行こうって決まっていて。あとはスタジオで合わせようっていう段階までは行ってたんですけどね。亡くなってしまって(ライブは)できなかったんですけど、「砂上、燃ユ。残像」に関しては裕さんのギターを残したまま、アルバムに向けて残りの曲をレコーディングしていこうと。

一裕さんがご存命のときに作ろうとしていた作品のコンセプトは、今回も活かされているんですか。

ロビン:活かされてます。レコーディングする人間が違うんで、いろいろ変わってはしまいますけど、「こういうことがやりたい」っていうコンセプトみたいなのは自分の中でわりと決まってた感じですかね。もっといわゆるプログレっていうのが強くあったんです。ギターの音作りも詰めて話してたんですよね。今までは音がギターっぽくないところにいたんですけど、もっと、ノイズだけでもいいから、周波数がこのへんにあるやつ、立体感のあるやつを録りたいっていうのはずっと話していて。「砂上〜」も変な音あるじゃないですか。ああいうのは裕さんがそれを理解して作ってきてくれて。そういう世界観でやりたいなっていうのはもともとあったんです。

一なぜそう思ったんですか。

ロビン:僕の子供たちが、普通に(英国プログレ・バンドの)イエスを聴くんですよ。アニメ『JOJOの奇妙な冒険』の影響もあるんですけど。今はパソコンでみんな何でも手に入るじゃないですか。僕らが何したって、気づく人は気づく、捕まえてくれる子は捕まえてくれるし。いつの音楽とか関係ないんじゃないか、単純に自分が一番好きな時代の音をもう一回突き詰めてみようかと思って。(キング・)クリムゾンとかイエスみたいなプログレッシブなバンド像を。もちろんdownyのループ感とかは残しつつ、そっちのエッセンスをもうちょっと入れたいなと。そこで(聴く人が)引っかかってくれればいいし、引っかかんないなら別に、僕らが古い音楽をやっているでいいし。そんぐらいでいいんじゃないかって、吹っ切った感じというかね。

一これが今の人に通じるかどうかとか、どう聴いてもらえるかを気にしなくなった?

ロビン:そうですね。音作りは絶対に、今ここ(スマホ)で聴こえるようにしなきゃいけないし、マスタリングでも、Spotifyはレベルが小さいからとか、いろいろ気にしなきゃいけないことはもちろんある。でも魂の部分では「気にしないでいいんじゃないの?」と。あとは裕さんの(余命)1年で作んなきゃいけなかったんで、本来は。もしかしたら1年保たないかもしれない、駆け足で作んなきゃいけないときに、ゴチャゴチャ考えずに好きなもんだけバーンと作っちゃおうかな、みたいな。でもまさかこんなに(亡くなるのが)早いとは思わなかったです。

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