レコード店やレーベルに大打撃、音楽業界で起きている流通システム破綻の実情

メジャーレーベル3社は昨年4月から、CDとレコードの流通をある同一のディストリビューターに任せるようになった。しかしその決定が、商品の紛失や管理ミス、そして深刻な納品遅延といった結果を招いている。(Photo by Nikolas Joao Kokovlis/Sopa Image/Shutterstock)


Kurtzは交流のあるレコード店オーナーたちを対象に、独自に調査を行なった。「2019年の最初の4カ月で、大半のショップの売上は前年比20パーセント増だった」彼はそう話す。「でもその時点から年末にかけて、売上はトントンかマイナス4パーセントくらいまで下がった」。Paschal曰く、現在の状況によって閉店を余儀無くされる店が出てくるのは間違いないという。

販売店以外で甚大なダメージを被っているのは、膨大なストリーミング回数が望めないインディレーベルや中堅クラスのアーティストたちだ。「音楽で生計を立てているミュージシャンたちにとって、ライブ会場やショップでのレコードやCDのセールスは、彼らの経済面における命綱となっています」Warnerに務めた20年の間に、考案されたばかりだったレコード・ストア・デイの発展に尽力したTom Grover Bieryはそう話す。

ADAに加盟しているあるインディレーベルの代表は、Direct Shotが引き起こしている混乱は「約9カ月にわたって私たちのビジネスを脅かしている」と話した上で、こう付け加えている。「状況が改善されることを期待して、私たちは作品のリリース予定を見直したのに」。メタルバンドOpethのマネージャーを務めるAndy Farrowによると、フィジカル版の納品遅れはバンドのチャートアクションに悪影響を及ぼしたという。

XLや4ADを含む一部のインディレーベルは、メジャーレーベルが所有する企業との流通契約を解消し、インディペンデントのRedeye Distributionと提携している(両レーベルを抱えるBeggars Groupはコメントを拒否している)。Direct Shotとのトラブルに巻き込まれている先述のインディレーベル社長は、現在代替案を模索しているという。Legacy Supply Chain ServicesのKrugは、現在の状況を「憂慮すべき事態」としている。


オレゴン州ポートランドのレコード店Music Millenniumに届けられた、CDが1枚入ったダンボール箱1つを運んできたパレット(Photo by Terry Currier)

破綻した流通システムの被害者であるインディレーベルの多くは、自分たちの経験を公にしようとはしない。「そういったことを口にする人々に目を光らせてる奴らがいるから、皆ビビってるんだ」ADAに加盟しているレーベルの代表を務める人物はそう話す。「契約を解消することで、インディレーベルは自社のネガティブな評判が広まることを恐れているんです」Burgessはそう話す。「それでも契約を解消する場合は、秘密保持契約を結ぶよう迫られます」現在の状況が続いている背景にはそういう事情がある。

インディのコミュニティが懸念を口にできない状況が何カ月も続き、その傷口が化膿し始めている現在、メジャーレーベルが意図的にフィジカル版のビジネスを終わらせようとしているという陰謀説が現実味を帯び始めている。「俺たちは需要があることを知ってる」ポキプシーのレコード店オーナーJohnsonはそう話す。「それでも奴らはビジネスを終わらせようってのか?」

Krugはその陰謀説について、「残念な憶測」と語っている。「彼らが被害を受けていることは、私たちも把握しています」彼はそう続ける。「フィジカル版のビジネスを存続させるため、私たちはこの事業に投資しているのです」Direct Shotの流通システムが再び機能するのはいつなのかという問いに対し、「具体的な時期について言及することはできない」とした上で、彼はこう答えている。「エンドユーザーまで影響する、様々な大きな変化が控えています」

ネブラスカ州オマハにあるレコード店Homer’s MusicのゼネラルマネージャーMike Frattも、メジャーレーベルがCDとレコード供給の息の根を止めようとしているという説を耳にしている。しかし、彼は異なる見方をしているという。「誰かが俺たちを痛めつけようとしているなんて思わないよ」彼はそう話す。「強欲さとお粗末なマネージメント、それに無能ぶりが今の状況をもたらしたんだ」

Translated by Masaaki Yoshida

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