音フェチ動画、ASMRの歴史

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第1章:「変な感じが心地いい」 ASMRがASMRたるゆえん

ASMRを経験したという人の大半は、物心がついたときから感じていたが、批判されたり、性的興奮と誤解されるのが怖くて、誰にも言えずにいたという。この感覚にきちんと名前が付けられたのは2010年になってから。当時医療ITの技術者としてニューヨーク州北部で働いていたジェニファー・アレン氏が、SteadyHealth.comの2007年のフォーラム記事をたまたま目にしたのがきっかけだった。「変な感じが心地いい」と題したそのスレッドでは、匿名の投稿者がこぞって「脳のうずき」「脳内オーガズム」と呼ぶ感覚についてあれこれ語っていた。

HeatherFeather:
母に説明する時は、「衝撃」と呼んでいたわ。母にはさっぱり通じなかったから、私もそれについて話さなくなった。大きくなって友達と遊ぶようになると、レストランに行くじゃない? そうするとウェイトレスとかがすごく良い声をしてるわけ。私が「やだ、今のウェイトレスの声最高」って言うと、他の子は「えっ、あんた女の子が好きなの?」って。「ちょっと待って、何言ってるの、みんなも感じない?」って言うと、みんなは感じないって言うのよ。だからまたそれきり誰にも話さなくなった。

GentleWhispering:
今までずっと、(ASMRを感じると)妙にゾクッとするというか、「くすぐったいような感じ」がする、って言い続けてきた。すると周りは変な顔で私を見るの。私の言っている意味がさっぱりわからない、って感じで。だから、あんまり話題にしなくなった。

ジェニファー・アレン:
私の初ASMR体験は19歳のとき、初めてのデスクワークに就いたときでした。あの時の感覚は今も覚えています。何時間もかけて調べて、もっと詳しく知ろうとしました。違う角度から調べたりもしました――「頭の中がゾクッとする感覚」とか「いきなりやってくる陶酔感」というワードで検索していましたが、何も引っかかりませんでした。フォーラムの会話を覗くまでは、何も見つからなかったと思います……昔は「ああ、どうしよう、脳に腫瘍があるかもしれない」とか「私が変なだけかも」と思っていました。(スレッドを)覗いたときは、間違ってなかったんだという気分でしたね。これこそ私が感じていたものだ、脳腫瘍じゃなかった、って。まぁ実際のところ、最初の頃はわかってる人なんて誰もいなかった。「本当は病気なんじゃないか」と心配する人が大勢いました。でも少なくとも、同じ体験をした仲間がいることを知って気が楽になりましたね

一人ではないことに勇気づけられたアレン氏は、この奇妙な、名前のない感覚について語り合うFacebookグループの立ち上げを思いついた。だがそれには名前をつける必要があると思った。

ジェニファー・アレン:
“Autonomous(自律)”という言葉は、個人個人でそれぞれ違うこと、本人がコントロールできる場合もあることを示す、私なりの表現です。(次に)とても激しく、上り詰めるような感覚なので、頂点を指すような表現がしたいと思いました。でも“Climax(クライマックス)”という言葉は使いたくなかった。しばらく似たような言葉を探しているうちに、最終的に“Meridian(絶頂)”という言葉に至りました。Meridianには、中国の経絡(けいらく:東洋医学で、生命エネルギーの経路を指す言葉)という意味もありますし、完璧だと思いました。“Sensory(感覚)”は、非常に感覚的な体験であるという意味。そして“Response(反応)”。つまり常にそういう状態にあるわけじゃなく、何かに反応して起こるという意味です。こうしてAMSRという言葉ができました。

Translated by Akiko Kato

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