音フェチ動画、ASMRの歴史

Image used in illustration by Fancy Studio/Shutterstock

長年インターネットの片隅に追いやられてきたASMRがメインストリームの仲間入りを果たした。ブームの先駆者、ASMRtist、セラピスト、業界関係者との対話から、着実に歩みを進めてきた「囁き声動画」の系譜を辿る

動画プラットフォームとしてのYouTubeは、繊細さとは無縁だ。いつ何時も数十億人ものユーザーが、キャッチーでカラフルなサムネイルと大文字オンリーのテンション高めなSEO重視の見出しで、クリック数を競い合っている(「5 MCRIBS IN 5 MINUTES MCDONALD’S MUKBANG CHALLENGE(マックリブ5個を5分で完食! モクバンチャレンジ・マクドナルド編)」。だが、黎明期のYouTubeは今よりもっと、ずっと静かだった。

YouTubeでも特に有名なサブジャンルのひとつが、自律感覚絶頂反応(Autonomous Sensory Meridian Response)、略してASMRだ。あまり知られていない神経学的な現象で、頭皮や首筋、背筋に走るゾクゾクするような感覚のことだ。少ないながらも現在公表されている研究によると、非常に強く感じると言う人もいれば、全く感じない人もいる。感じるという人の間でも、その効果は実に多種多様だ。「脳がうずくようだ」と表現する人もいれば、完全な「脳内オーガズム」だと言う人もいる。だが、確かにわかっていることは、ASMRは特定の、ただしこれまた多種多様な聴覚上・視覚上の刺激によって引き起こされるということだ。タップ音、ひっかき音、囁き声、摩擦音、リップ音、あるいは絵筆やペンを滑らせる音。

2010年、医療ITコンサルタントのジェニファー・アレン氏がASMRという用語を考案して以来、YouTubeがコミュニティーに集いの場を提供してきた。ASMRコミュニティーはこの10年で、フェチと揶揄されたひと握りのユーチューバー(通称ASMRtist)の手を離れ、大きなムーブメントへと成長し、ASMR動画の閲覧回数は数十億回にも及ぶ。スーパーボウルのCMや、エマ・ストーン出演映画のワンシーン、グラミー受賞作品に影響を与えた。Wマガジンに至っては、カーディ・Bからマーゴット・ロビーまで、セレブリティ大集合のシリーズ特集を企画した。そしてインターネット発のコミュニティーやミームとは違って、ASMRのコミュニティーは移り変わりの激しいニュースの波を生き残っただけでなく、雪だるま式に着実に増大し、今やメインストリームの仲間入りを果たしつつある。

ASMRの誕生から過去に例を見ない成長までを追うべく、ローリングストーン誌はASMRtist、研究者、セラピスト、広告業界の重鎮らに話を聞き、彼らの(物静かな)言葉でコミュニティーについて語ってもらった。

Translated by Akiko Kato

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