新型コロナショック、危機的状況のコンサートビジネス

コロナウイルスが原因で、SXSWやコーチェラをはじめ多くのライブ音楽イベントが計画変更を余儀なくされた。(Photo Illustration images: Shutterstock, 3)


業界で最も打撃を受けているのは、ツアーマネージャーをはじめサウンドボード・オペレーターや施設のスタッフ、クルーメンバーなどツアー収入に依存する人々だろう。コンサートが行われなければ収入源を失うことになる。「私のような立場の人間が最も懸念しているのは、担当しているバンドの仕事が無くなることです」と、ジミー・イート・ワールドとエンジェルズ・アンド・エアウェーブズらバンドのツアーマネージャーを務めるジェフ・ペレイラは言う。「仕事の無い時期に備えて蓄えねばなりません。場合によっては数週間も続く予期せぬ休暇が現実味を帯びているのです。ツアーやプロダクションに関わる多くの人たちが同様の課題に直面しています。皆結局は、まだ開催される可能性のあるツアーがあれば一生懸命に仕事を求めて働きかけるか、或いは音楽とは関係のない地元での仕事を探さねばならない状況です。」

「ある時、バンドのメンバー全員がインフルエンザにかかって下痢と嘔吐で大変だった。それでも俺たちはステージに上がってプレイした。内容はとても見せられたもんじゃなかったけどね」 ブライアン・クック(ベーシスト/ロシアン・サークルズ)

インストゥルメンタル・バンドのロシアン・サークルズのベーシスト、ブライアン・クックは、6週間に渡るヨーロッパツアーを延期せざるを得なかった。ツアーで訪れる予定だった全ての国が、大人数の集まるイベントを禁じたからだ。「俺たちはあらゆる事を乗り越えてきた」とクックは言う。「メンバーのギタープレイヤーは親指を骨折したまま6週間のツアーに臨むつもりだった。高速道路を移動中にトラックに突っ込まれて、機材の半分が壊れてしまったこともある。ほとんどのアーティストはどんな状況でもプレイを続けると思う。背中痛で立っているのもやっとの状態でプレイしていたアーティストを知っている。ある時は、バンドのメンバー全員がインフルエンザにかかって下痢と嘔吐で大変だった。それでも俺たちはステージに上がってプレイした。内容はとても見せられたもんじゃなかったけどね。」

「レコードはできているしファンも心待ちにしてくれているから、ビジネスを止める訳にはいきません。だから会議も自宅からビデオチャットで続けているのです」と、レーベル社長のホワイトは言う。「あらゆる状況にできるだけ備えることが、最優先課題です。不安定な時期こそ、迅速な意思決定が必要とされるのです。」

コンサートファンが被る損失は?

ファンもまた、自分の財布にコンサートのキャンセルを実感している。2019年、SXSW向けのホテルの宿泊料金は1泊あたり平均365ドル(約3万8600円)で、平均滞在期間は5泊を超えた。つまり多くの場合、宿泊だけでひとりあたり2000ドル(約21万円)近くを費やしたことになる。2020年のイベント開催のキャンセルを決めたSXSWは、今年のチケットに関して、2021年、2022年、2023年の同フェスティバルへの振り替えを可能にすると発表した。フェスティバルの広報担当がローリングストーン誌に語ったところによれば、振り替えチケットには何らかの「追加特典」を付加しようと考えているという。

マイアミで開催予定だったウルトラ・ミュージック・フェスティバルは3月9日夜にチケット購入者へ宛てたメールで、今回のチケットは今後2回のフェスティバルに有効だとし、さらに追加の特典やサービスのパッケージの詳細も伝えた。特典には、ウルトラ・ワールド・ワイドの無料チケット、翌年行われるフェスティバルで開場前の特別DJセットへの参加、250ドルまでの買い物の50%割引が含まれるという。ところが説明の中に「返金」という言葉が見当たらないため、ソーシャルメディア上では即座に怒りの声が上がった。

SXSWのリストバンドのスタンダード価格は225ドル(約2万4000円)、一般のミュージックバッジが1395ドル(約15万円)で、プラチナバッジはさらに高額になる。例えばミュージックバッジとホテル代だけでも3400ドル(約36万7000円)かかり、さらに現地までの交通費や食事代などが別途かかることになる。数ヶ月前からお金を貯めてSXSWに参加するファンすらいる。アナリストらが指摘するように、コロナウイルス危機が収束した後はライブイベントビジネスが再び勢いを取り戻すだろう。

「人類の文化の中でもとりわけ音楽は代用の利かない存在です。安全であると確認できれば、人々はまた会場やイベントに足を運ぶことでしょう」とケネディは言う。

Translated by Smokva Tokyo

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