JAGATARAのOtoが語る、江戸アケミが残したメッセージとバンドの過去・現在・未来

1982年4月4日、『反核ライブ』に出演した暗黒大陸じゃがたら。当時の白黒写真をColouriseSGでカラー化(Photo by Junichi Uchimoto)


じゃがたらの今後、Otoにとってのレベルミュージック

―Jagatara2020としてのCD『虹色のファンファーレ』が発売されたので、その話も少ししましょう。新曲が2曲入ってますね。「みんなたちのファンファーレ」と「れいわナンのこっちゃい音頭」。「みんなたちのファンファーレ」はミナミさん色がバーンと出ている明るい曲で。

Oto:内本さんはTANGOSも聴いてくれていたから、TANGOSでミナミが書いてきた歌詞の感じがわかるでしょ。

―一貫してますよね。それでいて、この曲からはミナミさんの歴史も感じるというか、ミナミさんにとっての“それから”があって、この歌に来れているということが伝わってきます。それが凝縮された1曲というか。

Oto:ほんと、そうですね。ミナミの歌が作れたことがすごく嬉しかった。ミナミのなかのアケミへの返礼が普遍的になって、天に応えているような感じがする。それが僕らみんなの歌になっているというか。このメロディがでてきたのはレコーディングが決まってからだけど、リズムのアイデアはずっと持っていたもので、アフリカのトゥアレグのひとたちのビートをファンク的に拡張したものなんです。で、歌の構成は、インドのバジャンに影響を受けている。天に向かって歌う曲をずっと作りたくて。Jagatara2020でそれができたことが、すごく嬉しいんですよ。

―「れいわナンのこっちゃい音頭」のほうはTURTLE ISLANDの永山愛樹さんが歌詞を書いて歌っています。この前のライブで愛樹さんがこれを歌うのを観ていて、江戸さんのバトンを受け取ったひとたちのなかでも、とりわけさっき言った「バカで何が悪い?」っていうようなところ……それこそBQ(笑)やLQの高さを受け継いでいるように感じました。

Oto:そこが僕が彼を好きなところで。だから意図的に。愛樹は明るいけど、明るいだけじゃなくてひとの悲しみと痛みの部分を真剣に受けとめている。爆発的に放出される彼のパワーは、辛さを全部跳ね返すものだと思うんです。人間の良心とか生命力を信じる気持ちが深くて強い。山本が指摘するようなアケミのバカをも包み込む抱擁力を愛樹にも感じたので、これはぜひ愛樹に歌ってもらいたいと思ったんです。大所帯をひとつにまとめる統領に相応しい思いやりが愛樹にはあるんですよ。



―そんな新曲2曲に加えて、88年・89年の未発表ライブ音源が3曲。新曲で「れいわナンのこっちゃい音頭」があって、未発表音源で「へいせいナンのこっちゃい音頭」があるというのがいいですね。

Oto:その2曲で僕とアケミの個性の違いが際立つっていう。アケミはやっぱり原石というか、宇宙に直結しているエネルギーが降りてきてるようなひとだったから……あ、こういう言い方がちょっと気持ち悪いか(苦笑)。この曲のなかで、それまでは“ナンのこ~っちゃ~い”とか気持ちよさそうに歌っているのに、マイナーのワン・コードになって“は~い、ゼロから~、は~い、始まるぜ~”って続いていくところがあって、あのパートを作ってしまうところがアケミらしいというか、ボブ・マーリーに近いところがあるよね。シャウトして、だんだんカオスになり、絶叫していく。言わずにおれないという感じで、強烈に放出されているエネルギーを感じる。まさに江戸アケミ節ですよね。で、「れいわナンのこっちゃい音頭」では僕はあえてそこに手を出さないで、“ナンのこ~っちゃ~い”のリフレインだけお裾分けしてもらった。アケミが生きていたら、「“は~い、ゼロから~”って歌ってるほうが大事なんだよ、ここをカットはなかろう」って言われそうだけど(笑)。でも僕は、じゃがたら流の音頭にしたかったので。




Photo by 西岡浩記

―さて、最後に今回のライブの総括とこれからの活動についてのことを伺えればと。

Oto:Jagatara2020の今回のライブはある種の実験でもあって、要はゲストの方に入ってもらって、どれだけじゃがたらの音楽になるのかってことを自分で知りたかったところがあった。だからなるべく歌ってもらう方にフィットする曲をチョイスしたつもりだけど、それでも噛み合わない曲も出てくるかなぁとか、お客さんが聴いたときに違和感を持つ曲が出てくるかなぁとかって不安も少しあったんです。でもやってみた結果思ったのは、誰に歌ってもらってもいいじゃないかってことで。とにかくゲストに迎えた歌手たちの歌が最高で、演奏しながらひたすら感動してました。一回こっきりの生リミックスみたいなもんでしょ? 聴き逃したくないなぁって感じでしたよ。じゃがたらの音楽性がそこにあれば誰が歌ってもフィットするんだなって思えた。それは愛樹を迎えて「れいわナンのこっちゃい音頭」を作ったときにも思ったことで。愛樹に歌ってもらって、それがじゃがたらになるかどうかは実験だったんだけど、なったなと僕は思ったから。

―なってますね。

Oto:うん。彼の歌がじゃがたらの歌になれてよかったです。それともう一方の話としては、今回、旧作がサブスクリプション化して、要するに世界からいつでもアクセスできるようになった。これは大きなことなんですよ。いままでなら、バンドを固定化して、アルバム作ったらプロモーションして、それに纏わるツアーをしてっていう流れがあったりしたわけだけど、いまはそうやって世界からいつでもアクセスできるから、日本のなかで継続的な活動をしているかどうかはそれほどたいした問題ではないと僕は思っていて。

―なるほど。

Oto:コンサートが決まったら、それ用にセットアップすればいいから、バンドを固定でいく必要はない。それは自分のなかですごく重要なポイントだったんですよ、Jagatara2020をやるにあたって。で、今回のライブは法要なので、自分の人生のなかでのお勤めとしてちゃんと果たしたかったことであり、必要なことだったんだけど、本当にみんなのおかげで無事に終えることができた。だから僕自身はまた森に戻ります。僕自身がライフワークとして選んでいるのは森からの暮らしなので。

ここからの10年で日本はすごい崩壊が起きると思っているし、中産階級はとっくの昔になくなって、もう日本は下層階級社会に落ちた。30年前はまだ自主権を持っていたけど、水の権利は売る、種の権利は売る、食品は遺伝子組み換えとゲノム編集でキテレツなものになってしまっている。政府は「福島は安全です」とかってプロモーションをして、どんどんアメリカ財務省から侵略されて搾取されっぱなしになって、国民は国民で自分たちが茹でガエルにさせられていることに気づかない。本当にとんでもないことになっているわけです。僕はそれに服従することはできないので、始めは音楽やりながらも安全な食べ物を作っている友達を増やしてやりくりしていこうと思っていたんだけど、福島の原発事故が起きたときにそれすらもう難しいと思って、音楽だけやっていられる悠長な時代を終えました。それでまず自分が生き物として安心できる食べ物を自分の手で得る暮らしを始めなきゃと考えて、自給的な暮らしに向かった。それが僕のリアルなロックです。“よく見ろ お前の足元を”とアケミは「HEY SAY!」で歌っていたけど、頭と口でバビロンを非難しても自分の足がバビロンにどっぷり浸かっているようじゃ話にならない。まずは自分の足を洗わないと。世界の支配者たちにとって、食品は人工削減と支配のための兵器なんですよ。誰かが作ったそういう食品を信じて食べるのは覚悟がいる。そんな世界のなかで、なるべく支配と侵略に服従しない暮らしをすることが自由獲得のロックだし、レベル・ミュージック(革命の音楽)なんです。そんな音楽を聴きたいので、じゃあ、まずは自分からやっていこうと。いつまでもただ叫んでるだけじゃ仕方がない。実際に始めていかないとね。アケミといたら僕は絶対そんな話をしていると思うし、僕にとってのじゃがたらのバトンの受け取り方はそこだったんですよね。



Oto:毎日お茶を作って生計を立てているのもそういうことだし、お米と必要な野菜を作って暮らしているのもそう。日々の暮らしのなかではゴハンとみそ汁、あとは梅干しがあれば生きていける。お米は自分で作ったものだし、味噌も大豆を育てて作っている。みそ汁の具は畑でとってきたばかりのものだし。それが僕にとってのレベルミュージックなんだよね。この暮らしをしていても音楽は作れるし、この暮らしをしているからこそ生み出せる音楽がある。だから日々の暮らしを脅かすものに屈しないで暮らすことが大事じゃないかと僕は思っていて。

ーはい。

Oto:世界の人口を削減するために、いまは添加物、遺伝子組み換え、ゲノム編集の技術によって、食品でじわじわと特定のひとたちを殺すことができるようになってしまった。そんな食べ物に依存しながらグローバリズムを批判しても、僕は話にならないと思うんですよ。じゃあ、そういう闇の世界に屈しないで生きていくにはどうしたらいいんだと考えて。そのビジョンをまずは自分から始めてみようと、いまの暮らしに入りました。で、この日々の暮らしがJagatara2020のビジョンになっていきます。いざ始めてみると、面白いですよ。自給的な暮らしは憧れでもあったし、暮らしの技を身につけていけるのは本当に面白い。

なので、メンバーを固定して定期的にいくつもライブをやって、それで暮らしていくというようなバンド形態は、もう考えていません。かつて音楽で生活費を稼ごうなんて考えたことがありましたけど、すごいストレスだった。いまは音楽は純粋に好きなことだけやればいい。ただ、アケミのメッセージがそうだったように、腐ったシステムの餌食にならないために必要な歌や音楽はあるんですよ。なので腐ったシステムの餌食にならないことをしようとしている集まりには参加したい。平たく言えば社会的なテーマを持った集まり。単に有名なバンドが集まるだけの大きなロックフェスとかには、もう興味がないんです。

―出る意味と価値のあるものに限定したい。

Oto:僕自身の考えはそうです。ただ、ライブ自体が楽しいからやりたいという思いのメンバーもいるでしょうし、それはもちろんやっていいと思っていて、そこの自由を僕がどうのこうの言うつもりはないんですよ。だから、僕は渋さ知らズ・システムって呼んでるんだけど(笑)、僕が出れないライブなら誰かゲストを入れてもいいし、若くて面白いギタリストがいれば参加してもらって、また新たなじゃがたらを実験していけばいいと思っているんです。もう、のれん分けって感じでね。アケミがいたときのじゃがたら……大文字のJAGATARAと、いまのJagatara2020は別物なので、別物の可能性を追求してやっていけばいいと思う。じゃがたらの音楽の作り方はもうフォーマットがあるわけだから。ミナミが歌ってもいいし、EBBYが歌ってもいいし、ていゆうが歌ってもいいし、ゲストが歌ってもいいし、そこはオープンでいいと思うんです。

―バンドというよりは、プロジェクト的なあり方ということですね。

Oto:そうですね。昔、渋谷のパルコ3で4時間ライブをやったことがあって、そのときはミナミとユカリがメインで歌う場面とか、ホーンセクションがメインのインストをやる場面とかもあった。そのコーラス・メインの曲もホーンがメインの曲も、結局作品として出すことはできなかったけど、僕はその構想も持っていたんですよ。当時はプリンスのバンドがそういう活動をしてましたよね。いままたそういう試みをするのもいいだろうし、いろんな面白いフロントマンとコラボしながら作品を作るのも面白いと思う。

で、僕自身はさっき言ったように森から発信するというビジョンを進めていきたいと思っています。「じゃがたら復活」とか言われてるけど、ライブに関してはまあ1年に1回か、2〜3年に1回か。わからないけど、それぐらいでやれたらなぁってくらいの感じですね。やらなさすぎかな(笑)。でも次に僕が入ってのJagatara2020のライブが3年後だったとしたら、そのときは3年経ったなりに進化した音楽をやりたいし、進化したじゃがたらを見せたい。新鮮味のないライブはつまらないからね。83年にアケミが高知に帰って86年に戻ってきたわけだけど、そのときも僕なりに考えて、あたかもずっとバンドが続いていたかのように見せようと思っていたんですよ。3年間休んでいたのはこのためだったのかって観たひとが思うぐらいに進化させた状態でアケミを迎えたかった。そういう思いはいまも変わらないから。

―クアトロのライブでも進化がハッキリと伝わってきましたからね。

Oto:そう言ってもらえて嬉しいです。でも進化を見せるには自分がまず準備をしないとね。音楽は日々進化しているわけだから。僕もいろんなひとの音楽を聴いているから刺激は受けるし。特に若いミュージシャンの音楽の消化の仕方に驚くし、新鮮だし。だから3年後にまたあるとしたら新曲をやりたい。

―そうなると、3年後どころか……。

Oto:そうだよね(笑)。やりたいアイデアはいくつかあるんですよ。フィーチャリング(七尾)旅人で作ってみたいし、フィーチャリング折坂くんでも作ってみたいしね。まだほかにもね。まあ僕が勝手に思ってるだけですけど。

―いいですねえ。本当にいろいろ楽しみにしてますよ。

Oto:はい。長いことありがとうございました。


Photo by 西岡浩記



<SPACE SHOWER TV>

「アンコールアワー JAGATARA特集」
※93年にスペシャで放送された番組の再放送となります。
・初回放送 3/13(金)24:00~26:00
・リピート 3/21(土)25:00~
https://www.spaceshowertv.com/program/special/2003_jagatara.html

「Jagatara2020 ライブ&ドキュメント」
・初回放送 3/14(土)22:30~24:00
・リピート 4/4(土)23:30~、4/17(金) 26:30~
https://www.spaceshowertv.com/program/special/2003_jagatara2020.html



Jagatara2020
『虹色のファンファーレ』
Pヴァイン
価格:¥2,000+税
発売中

収録曲
1. みんなたちのファンファーレ(新曲)
2. れいわナンのこっちゃい音頭(新曲)
3. LOVE RAP(1988年/未発表ライブ録音)
4. プッシー・ドクター(1989年/未発表ライブ録音)
5. へいせいナンのこっちゃい音頭(1989年/ライブ録音)
6. みんなたちのファンファーレ(カラオケ)
7. れいわナンのこっちゃい音頭(カラオケ)

https://www.jagatara2020.com/

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