精神病を偽り20年生きてきた男の「誰も救われない悲劇」

Illustration by Simon Prades for Rolling Stone



心神喪失は嘘か真か

一方、モントウィーラーが精神疾患を偽装したというPSRBの見解にも異論が持ち上がっている。事件から8カ月が経過した2017年9月上旬、オレゴン州立病院の司法鑑定部のオクタヴィオ・チョイ元部長は、施設の鑑定室のひとつでモントウィーラーと6時間に渡って面談した。数カ月前にモントウィーラーがマルヒュア郡留置所で自殺未遂を図ったためだ。実際の年齢よりも20歳は老けて見えたとチョイは言う。話し方、思考、動きは全体的に緩慢で、混乱しているらしく、しばしば前の話題に付け加えようとするものの、結局思考の糸が切れるという具合だった。チョイは、自分の鑑定は先の心理鑑定とは「ほぼ無関係」であり、当初の心神喪失の診断の正当性を評価するものではない、と念を押した。だがモントウィーラーは面会で、母親が死んで以来ずっと声が聞こえる、という主張を繰り返した。

彼がチョイに語ったところでは、初めて声を聞いたのは叔父の農場にある小川の淵で釣りをしていたときだったそうだ。当時彼は6歳で、母親そっくりの声で優しく「アンソニー」と呼ぶ声がした。叔母が家から呼んでいるのだろうと思ったが、急いで帰宅してみると、家には誰もいなかった。モントウィーラー曰く、声は大人になっても聞こえていたという。母親の声で優しく「大丈夫よ、大丈夫」と語ることもあれば、切羽詰まったような口調で「よそから聞こえてくる」こともあったという。「俺や全てのものに怒鳴り散らすんです」とモントウィーラー。「本当に最悪ですよ」。また、ボイシの聖アルフォンス病院のスタッフが首に金属の機械を差し込んで、それをコードで脳に繋いでいるに違いない、とチョイに語った。それ以来、記憶の一部が「ごそっと抜け落ちている」と言う。ごく最近では、マルヒュア郡留置所の警部補が自分の考えを呼んでいる、と疑った。「声が、あいつはお前の心を読めるぞ、と教えてくれたんです」

過去のモントウィーラーの発言も、明らかに一貫性に欠けていた。例えば、海兵隊の仲間で地雷を踏んだマイケルではなく、豚の群れを避けようとして彼がジープのハンドルを切ったため、仲間の海兵隊を死なせたことがトラウマになっている、と言った。アニタについても、まるで彼女がまだ生きているように話した。しばしば「明らかに障害を過剰に演じているような場面もありました」と、チョイは言う。それでも、細部を思い出すのにしばしば苦労したりするときなどは、「ちゃんとした答えをしようと努力しているようにも見えました」。チョイ曰く、これが「精神鑑定の難しいところです」

Translated by Akiko Kato

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