精神病を偽り20年生きてきた男の「誰も救われない悲劇」

Illustration by Simon Prades for Rolling Stone



再犯の理由、そして診断の正当性

警察に追われている間、モントウィーラーはクリルに電話をかけ、愛していると告げた。そして、ハーモンを傷つけたからもう会えないと言った。「彼が精神病院にいたことは知っていました」と、クリルは後日取材で語った。「でも、私も皆さんと同じように、狐につままれた気分です」

モントウィーラーの心神喪失の抗弁を認めたのは正しい判断だったのかどうか――1997年に声が聞こえると言ったのは嘘なのか、それとも後になって、声は聞こえていなかったと言ったのが嘘なのか――という問題は、7月の裁判に先駆けた予備審判で再び繰り返される。これまでのところ明確な答えは見つかっていない。彼が凶悪化するような精神疾患を患っていたなら、病院のスタッフや審査会はなぜこうもやすやすと騙されてしまったのか? もし病を患っていなかったのなら、なぜ彼は自由の身となった1カ月後に、大勢が見ている目の前で無意味な殺人を犯したのか?

PSRBに全責任を問う試みは、バツの悪い結果に終わった。マルヒュア・エンタープライズ紙はProPublicaと共に「病める制度:心神喪失後も繰り返される惨事」と題した特集シリーズを組み、PSRBが市民を危険に晒したと報じた。中でも注目すべきは、統計データを満載した記事だ。「心神喪失が認められた後、オレゴン州によって自由の身となった者は、州刑務所から釈放された刑事事件の犯罪者より、再犯に至る割合が高い」とある。だが1月、とある読者がマルヒュア・エンタープライズ紙の記事の「裏付けとなるデータと説明」を再検証するよう求めた後、ProPublicaはシリーズ特集の完全撤回に相当する文面を投稿した。PSRBから釈放を認められた人々が再犯を起こす割合について、記事では数字が大幅に水増しされていたことが判明したのだ――実際は、刑務所から出所した場合の方が再犯率はずっと高かった。入手可能なデータが少なかったことと、州の記録を読み違えたことがミスの原因だったと主張している。ゼイツ編集長はTwitterに「今回のような由々しき大失態は、全て私に全面的かつ直接的な責任があります。今回の不祥事は、本紙で来る日も来る日も取材に明け暮れる記者たちの熱意とは無関係です。今後このようなことがないよう、善処して参ります」と投稿した。

先月マルヒュア郡巡回裁判所は、オレゴン州とPSRBを相手取ったジェシカ・ベイツの訴えを棄却した。ベイツの弁護団は、モントウィーラーの釈放公聴会が適切に行われていなかったこと、審査会のメンバーが彼の精神状態を判断するのに十分な訓練を受けていなかったこと、そして釈放の決定が市民に予測可能な危険をもたらしたことを主張した。だが裁判資料によると、判事は「PSRB審査会の不正行為または不適正を示す証拠はない」とし、「PSRBの管轄下から釈放された際、モントウィーラーがベイツ夫妻と衝突事故を起こす可能性が予測できたとは言い難い」との裁定を下した。判事は最後に、PSRBの決定は「公聴会で提示された事実と法律上事案に基づいてなされた」と締めくくった(ハーモン家が起こした訴訟も、同様の理由で秋に棄却された)。

Translated by Akiko Kato

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