URC50周年ベストから読み解く、あの頃の若者たちは人生とどう向き合っていたのか

・休みの国「追放の歌」



今回ご縁があって51曲選ぶとなったんですが、URCは旅の歌が多いんですよ。当時の若者が、どこかに行きたいということを思いながら暮らしていたということの現れでもあるんでしょう。この「追放の歌」は旅の歌ではありますが、ちょっと旅のニュアンスというか質が違う感じがしたんです。歌詞をご覧いただくとわかると思うんですが、追われる人の歌なんですね。仲間外れにされて追われるように出ていく。でも、その自分も昨日までは追放する側にいた。ちょっと曲が明るいので、なかなかそこの歌詞のニュアンスまで受け止められないという人が多いでしょうが、今の時代の歌かなと思ったんですね。つまり、いじめられて出ていく人、そしていじめられて出て行った人が昨日まではいじめる側にいたという歌だと思うと、この歌はすごい歌だなと思い、「人生と暮らしの歌」のほうに入れました。休みの国というのは、日本語のロックの創世記には忘れてはいけないジャックス。早川義夫さん、木田高介さん、角田ひろさん。和光大学の学生です。その運転手をしていた高橋照幸という若者が組んだバンドなんですね。ジャックスのメンバーもアルバムには参加している。そういうグループだったんですけど、高橋照幸さんも日本を捨ててヨーロッパに行ってしまったんですが、彼も亡くなってしまいましたね。そういう意味でも、それぞれの遺産というのがそれぞれのアルバムに集められています。「追放の歌」のあとに、何を持ってくるのか悩んだんです。この歌を持ってきました。

・シバ「青い空の日」



シバ。本名が三橋誠さん。漫画家でもあります。絵を書いたりしていますね。ブルースギターの名手。さっきの「追放の歌」のあとに、この「青い空の日」。景色がつながっているような気がしたんですね。どんな風にお聴きになっているでしょうか。さっきURCには旅の歌が多いって言いましたけど、旅といっても新幹線の旅とかではなくて、はみ出してしまっているというんでしょうか。当時ドロップアウトという言葉がありました。みんなが仕事をしているときに原っぱや河原に寝転がって、空を見ながらぼーっと自分の明日を考えたり、自分の詩を書いていたり、絵を描いていたりという人生観。それが今の若い人に共感を持ってもらえるんじゃないかという気もしてます。競争社会で早く走れとか、あいつに負けるなとか、さあ次へ行けとか言われていることに対して、疲れてしまった人がたくさんいるんだろうと。改めてこの頃の歌を聴いたときに、やっぱり何か忘れてきたかもと思う。そのへんも「青い空の日・ブルースカイブルー」の中には出ている気がしました。

Rolling Stone Japan 編集部

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