ミュージックビデオの進化とYouTubeの15年

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2010年代以降のミュージックビデオの進化

2010年代中盤になって、アーティストたちはようやくビジュアル重視のプラットフォームInstagramをフル活用するようになった。当時は(まだ)ミュージックビデオを1本丸ごとアップロードすることはできなったが、いい宣伝にはなった――ただし、Instagramが重視するような、お洒落で明るいトーンのビデオに限られるが。Apple Musicで初公開された後、YouTubeで大々的に宣伝されたドレイクの「Hotline Bling」は、まさにインスタ映えするビデオだった。カラフルかつミニマルな宣材写真に大勢の人々が引き寄せられた。

だがもちろん、誰もが「Hotline Bling」をリピートした理由はドレイク本人にある――小さな箱の中でアホっぽく踊る姿は、ミームに息が吹き込まれ、スマホの画面から直接飛び出してきたかのようだ。「Hotline Bling」のミームは、およそ2年間ネットジョークの宝庫として名を馳せたTwitterの6秒動画アプリVineで、まさかの大ヒットを飛ばした。テニスをプレイするドレイク、ライトセーバーを振り回すドレイク、ナトリウム・カリウムポンプなどの科学原理を教えるドレイク。Vine以外でも、ビデオのスチール画像を使った「ドレイク的にあり/なし」ミームがインターネット語録に殿堂入りした。『サタデー・ナイト・ライブ』は、ドナルド・トランプ氏を使ったこの動画のパロディを放映した。



こうした長期に及ぶファンの適応力が、アーティストに再びミュージックビデオに重きを置かせるようになった。ストリーミング独自の性質とCDアルバムセールスの激減ゆえ、新規ファンを取り込んでかつ既存のファンとの関係を深めるには、ミュージックビデオが絶好の手段となる。YouTubeか否かを問わず、昨今のミュージックビデオの進化はこの関係性をさらに推し進めようとしている。ビヨンセはビジュアルアルバム『Lemonade』のリリースをHBO特別番組として放映した後、自ら共同オーナーを務める配信プラットフォームTidalで限定公開した。YouTubeのプレミア公開機能をいち早く活用したアリアナ・グランデの「Thank U, Next」のライブ動画配信とチャットルームには、推定82万9000人のユーザーが集まった。シングルはミュージックビデオの数週間前にリリースされていたが、グランデのチームはシングルのストリーミング回数を伸ばそうと、1曲フルに使ったミュージックビデオの「予告編」とメイキング動画集を投稿。おかげでシングルチャートの順位もさらに上昇した。

近年ミュージックビデオ全体に見られる最大の変化は、モバイル端末への最適化だ。Instagramのグリッドディスプレイやスマホに合わせた、正方形や縦長のビデオも珍しくない。最近ではポスト・マローンが「Circles」で、“2画面ビデオ”を公開した。再生するには、2台のスマホを並べて、別々のプレイリストで同時に再生しなくてはならない。

だからといって、ミュージックビデオがYouTubeを離れることはしばらくないだろう。Googleも事あるごとに、音楽業界の動画プラットフォームの旗振り役であり続けると発言している。だがそのためには、プラットフォームやビデオだけでなく、アーティスト側の創意工夫も必要だ。今や枠に囚われず、ビジュアル的な試みを実現することができるようになったのだから。

Translated by Akiko Kato

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