バンドと「地元」を繋ぐ物語 FAITHが切り開く新時代

「Yellow Road」は上京して最初のスタジオ練習の時にできた

個人的に『Capture it』のポイントになっていると思うのは等身大の10代の感情を綴った「19」。「サビでギターにシンセをユニゾンで入れたり、現代の音楽をFAITHがやったらどうなるかっていう感じでつくりました」(ヤジマ)と語っているように、これまでのFAITHにはなかったEDMっぽいテイストがありつつも、彼ららしいいなたいサウンドも損なわれていない。それはインストアイベントという環境でもしっかり伝わってきた。



最新作は、「自分たちの音楽のためにも流行りは追わないといけないと思ってるんだけど、それをやりすぎちゃうと曲が先行しちゃって、誰がやってるのか関係なくなっちゃうような気がして。聴いてすぐにFAITHってわかるような曲にしたい」(レイ)というように、90年代アメリカンオルタナティブをベースにしたサウンドからの彼らなりの進化を図ろうとしている。そのために、今回の制作に5人はより多くの時間を割いたという。



「今まではアレンジができたら歌をつけて、それをそのまま出してたんですけど、今回はアレンジをつくって、歌をつけて、その歌を聴いてからまたアレンジを歌に寄り添わせるっていう工程が加わったので、歌がより前に出てる」(ヤジマ)

「自分の声をすぐ近くに感じて欲しくて、もっと感情を込めたり、歌詞の意味を考え直して、こういうことを伝えたいからこういう感情で歌おう、みたいに意識しました」(Akari)

「これまではギタリストとしての考え方のまま曲をつくってたから、俺が俺がっていう感じが強かったんですけど、お客さんが聴くのはボーカルだし、FAITHらしさも真ん中にAkariの歌があってこそだから、今回は引くところは引いて、頭を使って曲を作れたかな」(レイ)

「ベースの役割を考えるようになったし、FAITHのベーシストはどうあるべきなんだろうってことを考えるようになりました。今回はそれを確立できたと想います。『2×3BORDER』に比べたらフレーズはシンプルだけど、これまで以上にしっかりと支えるリズム隊になってると思います」(荒井)

「うん、しっかり支えてるね」(ルカ)

と試行錯誤の末に獲得した自信が5人の言葉からもうかがえる。

話を戻そう。インストライブ最後の曲「Yellow Road」をプレイする前、Akariはこの曲は東京に上京して最初のスタジオ練習の時にできたというエピソードを披露した。そして、ホームシックになることもあるけど、寂しいから帰ってくるんじゃなくて、いいお知らせを持ってここに帰ってきたい、と付け加えた。300人が手拍子するなかで鳴らされたこの曲は、ほかのどの町でも味わえない温かさに溢れていた。


Photo by Kazushi Toyota



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