URC50周年3枚組ベストを5週に渡り全曲紹介、あの頃青春だった人たちの遺産を聴く

最重要人物岡林信康と、最重要バンドはっぴいえんど

この3枚にはそれぞれテーマがあるんですね。単に代表曲が並んでいるというわけではないです。どういうテーマを歌っていたかが伝わりやすくするようにコンセプトがあります。今日ご紹介するのはDISC1「人生と暮らしの歌」。まずはDISC1の1曲目からお聴きいただきます。岡林信康さんで、「ゆきどまりのどっちらけ」。

・岡林信康「ゆきどまりのどっちらけ」



岡林信康さんはURCの発足にあたって、とても関係が深いんですね。URCが発足した主旨は商業主義に乗らない歌を自分たちの手で世の中に送ろうという、その一点。岡林さんの「がいこつの唄」、ザ・フォーク・クルセダーズの「イムジン河」が発売中止になりました。それがきっかけだったんですね。そういう意味では岡林さんがいてURCが始まったといって過言ではないでしょう。URCから岡林さんのオリジナルアルバム『わたしを断罪せよ』、『見るまえに跳べ』、『俺らいちぬけた』3枚出ているんですね。これは3枚目に入っている曲です。フォークの神様と祭り上げられてしまって、彼は京都の山中に引っ込んでしまった。その心境を歌っていますね。バックは柳田ヒログループです。岡林さんがこれを書いたのは、25歳のとき。みんな若かったんです。

・はっぴいえんど「春よ来い」



1曲目が先ほどの岡林信康さんの「ゆきどまりのどっちらけ」、2曲目がこのはっぴいえんどの「春よ来い」。これでなければいけないという始まりなんですよ。最重要人物と、最重要バンド。はっぴいえんどは、大滝詠一さん、細野晴臣さん、鈴木茂さん、松本隆さん。元祖日本語のロックですね。1970年にデビューアルバム『はっぴいえんど』が出ました。その1曲目です。はっぴいえんどは岡林信康さんのバックバンドでプロになりました。はっぴいえんどと岡林さんを結びつけたのが、当時URCの音楽出版会社アート音楽出版の社員だった音楽評論家の小倉エージさんであります。この「春よ来い」はなんで日本語のロックの元祖と言われるかというと、いろいろな根拠があります。この歌の中には「お正月」「こたつ」「除夜の鐘」が出てくるわけですね。日本の年末、大晦日からお正月の風景が歌われている。コタツにみかんですからね。そしてドロップアウトしているんですよ。家族と一緒にお正月を過ごしていないんですね。当時のバンドだけではなくて、当時の若い人たちの、大袈裟に言うと生き様。年末の過ごし方が顕著に歌われていたりする。こういう日本の生活感のあるロックというのは、それまでのグループサウンズにはなかった。彼らが日本のロックの元祖と呼ばれたりしている所以でもあるんですね。大晦日をこうやって過ごしている若者たち、いっぱいいるでしょ? あまり行くところがなくて、家にも帰れなくて、コタツでみかん食べながら俺たち明日からどうするみたいなことを話している。中には来年バンドで絶対に成功しようと言っている人たちもいるでしょう。そういう人たちに向けてお送りしている、聴いてほしいというのが、この『URC 50th ベスト・青春の遺産』でもあります。

Rolling Stone Japan 編集部

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