DJ後藤まりこの叫びは、現在の空気をどう揺らしたのか?

18時10分、待ちきれぬ観客から「DJ!」コールが巻き起こる中、客電が落ちると、新アルバムの1曲目「Loved by Gainsbourg.」を思わせるSEが流れ、後藤が登場。「DJ後藤まりこです。よろしくお願いします! 渋谷WWW遊びましょう!」と告げると「真冬の甲子園」へ。バイオレンスなビートの上で叫ぶ彼女。観客前の柵上に立つとそのままダイブでフロア中段へ。会場には風船や紙吹雪まで飛び交い、熱狂が轟々と渦巻き始めた。


Photo by 宇佐美亮

この日のライブは、彼女の中でも演出に特化したライブだったように感じた。常に、ステージを写した映像と様々なイメージが歪んだミックスで混ざり合うVJが流れ、ゲストのみてぃふぉとセイちゃんの2人が後藤の横でコールアンドレスポンスのフリップなどを持ちながら観客を煽る。後藤の破壊衝動を見せつけて進むだけではなく、様々な演出を組み合わせてメッセージを体現する素晴らしいステージだった。

そこから、「ONIGOROSHI」、「LSD」と進むに連れて観客の興奮度はさらにヒートアップ。「あなた方、そしてカメラの前のあなた方の全部、全部……」と言って始めたのは、アルバムの中では最初にできた原的な初期衝動による楽曲「Breeeeeak out!!!!!」。爆発的なエネルギーで会場が燃え上がる。そこから畳み掛けるように「畳 so good!!!!!」へと繋がるとフロアはもうぐちゃぐちゃだ。


Photo by RYUTARO SAITO

曲を終えると、ヒートアップした観客間で喧嘩が勃発。後藤は、それを収めながら「愛してるよ」と優しく告げ、笑ってMCをしていた。「いろんな大人が居ますね」とアコースティックギターを手に取り、「replay ATAMI」のコードで即興の弾き語りを始めると、ようやく平和なムードに落ち着く。後藤も「こんな時だからみなさま、助け合っていきましょう」と締めた。会場にたどり着いた1人1人を誰も置き去りにしない。この日は特に、そのような意識があったのではないだろうか。


Photo by RYUTARO SAITO

続く「四畳半箪笥ダンス」では、客の肩の上に立つ彼女。「愛の重さは心地いいですか。僕の重さは愛しいですか」と投げかける。生は愛しい重さを持っている。生と生のぶつかり合いを超えて、観客はさらに熱量を増していく。

フロアが狂乱する高速ビートの「heaven」から、後藤が「子供のままで聴いてください」と告げると「ねばーえんでぃんぐすとーり」へ。バックのVJでは、映像制作チーム「にんクリ」が作成したアニメーションMVも流れ、気がつけばライブも終盤。「僕は絶対誰にも殺されへんぞ」。そう言って始めた本編最後の曲は、アルバムのラスト曲「おばけ」だった。

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