LITTLEが「春よ、来い」に載せてラップする亡き父への想い

―〈うちんち ユーミン家 わりとご近所〉というリリックがあります。お父さんがユーミンさんと幼稚園、小学校の同級生なんですよね。

本当にご近所さんで、14時になったらユーミンの曲がかかるし、冬になったら商店街は「恋人はサンタクロース」がかかる町なんです。ユーミンのお母さんと、うちのおばあちゃんが知り合いで、近くの和菓子屋で紹介してもらった記憶もありますね。

―八王子出身のミュージシャンの方は多いですが、八王子のことをすごく誇りに思ってらっしゃる印象があります。

地元意識が強いですよね、すごく。

―東京の中でもそこまで地元意識が強い場所ってそこまでないようなイメージがあるんですけど、実際どういう感覚なんでしょう。

東京じゃない感というか。昔の人ほどそう思っているんじゃないかな。昔はすごく勢いがいい町で、人もめちゃめちゃいてって感じだったので。その時代に育った人はみんなもっと好きなんじゃないかなと思います。

―歌詞の中に〈なんかラッパーって親に感謝ばっかって いじられそうでやんなかったけど〉ともありますけど、別のインタビューで「フィクションとノンフィクションを上手く織り交ぜて歌詞を書く」ってことを以前おっしゃっていました。ここまでノンフィクションを織り込んだ歌詞というのは珍しいですよね。

作品性と言うと堅いけど、ノンフィクションでも創作物を作るのが好きなんです。自分の思ったことを吐露するだけではなくて、みんなのものにしていくのが好きなので、自分の話でもなんでも、作っていく時にラッパーならではのことを言うというか。ユーミンのカバーをしていて、ユーミンって言葉が歌詞に出るんだみたいな(笑)。普通のカバーだと、歌詞を足すこと自体もあまりないけど、こういう形だからこそできる生々しさがあった方がいいなと思って。自分じゃなきゃできないようなことを入れられたらと思ったうちの1つですね。

―表現者である以上、自分のやってきたフィールドで作品にすることから切っても切り離せないことであり、それが誠心誠意の表現なのかなと感じました。

自分が韻を踏むからということもあるんですけど、感情が言葉になったとき、似た音や言葉を探すようになってもう何十年経つし、自分の感情なんだけどフレーズっぽくなってしまうことはある気がしていて。だから、本当にリアルな時だけ歌にしないなんていうのもおかしな話だなと。ちょっとした感情が揺れたときでも「いいなこれ歌にしよう」みたいになっているのに、これだけ大きなことがあった時だけ歌にしないのも不自然だと思って。本当にくだらない曲とか、ただ韻を踏みたかったから作った曲、くだらない歌もいっぱい作ってきたから、1曲ぐらい大切なことを歌ったところでバチが当たらないんじゃないかと思った部分もあります。

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