マカロニえんぴつが体現する「カッコよさ」と「ダサさ」のベストバランス

UNICORNよりスピッツ寄り?

―でも、UNICORNからの影響が強いのはわかるんですけど、基本的にメンバーの音以外は鳴らさず、アレンジにバンドとしての筋が通っていて、ポップに見せかけてロックなところなんかに、僕はスピッツっぽさを感じるんですよね。

ああ、あまり言われないけど、僕もUNICORNよりスピッツ寄りだとは思ってますね。僕らはライブが真面目なんでUNICORNにはなれないし(笑)、スピッツはアレンジで遊んでる曲がけっこうあるじゃないですか。スピッツの曲で好きなのが「愛のしるし」で、あの曲ってT・レックスとかいろんな人のオマージュが入っててすごく面白いんですよ。

―ところで、ライブで同期を使わないというのはこだわりがあるんですか。自分たちで鳴らせない音は鳴らしたくない、とか。

ポール・マッカートニーが同期は絶対に使わないって言ってるから俺たちも使わないっていう(笑)。それに、一度使っちゃうと歯止めが効かなくなると思うんですよ。極端な話、同期を使ったらギターも弾かなくて済むじゃないですか。まあ、そうは言いつつ、前回のツアーでは同期を初めて使ったんですけどね。だけど、自分たちで鳴らしてない音が鳴ってるのはロックバンドじゃないなって思っちゃう。

―やはりそういう気持ちがあるんですね。

でも、これはあくまでも自分がやる場合の話で、他のバンドがどうこうっていうわけではないんです。なんとかしてメンバーだけで補おうとする楽しさがあるんですよね。できないことはできないでいいんです。例えば、オルガンとピアノが同時に鳴ってる曲があって、今の機材ではライブで再現できない。そこでどっちをとるか考えなきゃいけないんですけど、そういう限界があるからこそ面白い。「ロックってそんなもんだろう」って。音源を完全に再現するということもしたいですけど、メンバーだけで、そのときに使える楽器だけでどうにかするっていうのが理想ですね。

―そういうライブに対する姿勢だとか、先ほどのレコーディングの話とか、今の世代では珍しくないですか。

同世代にはいないですね。レコーディングでも、欲しい音によってギターを変えるのは当たり前だと思ってたんですけど、いつもお世話になってるエンジニアさんから「そんなに音作りにこだわってるバンド、最近はいないよ」って言われて。だから、上の世代のバンドの音が好きなのかもしれない。

―それはあるでしょうね。そういう昔気質なこだわりがあるからか、僕みたいな40オーバーのリスナーの耳にもすごく馴染むのかもしれない。

上の世代の人たちに刺さってるっていうのはめちゃくちゃうれしいですね。結成当時からロック好きなおじさんに認められたいっていう思いがあったし、ツアーでもおじさんが拳を挙げてるのを見るとうれしくて。僕はギターが好きだし、レコーディングでもアンプを変えたり、竿(ギター)を変えたり、ギター録りには時間をかけるんですけど、自分が憧れてたロックってそういうものなんですよ。くるりだったりGRAPEVINEだったり、みんなめちゃめちゃ音にこだわるじゃないですか。あれをやる人がいなくなったらかなり寂しいですね。

―わかります。

ちょっと関係ない話なんですけど、某FM局のDJの方とお話したときに「ギターはもっといろんな音が出せる楽器なのに、最近の若手バンドはひとつの使い方しかしてなくて面白くない」って言ってて、それはすごくわかるなって。僕はギターが好きだし、いろんな使い方ができると思ってるから、アーミングにもこだわるし、クイーンのフレーズを弾くときは絶対にコインを使うんですよ。それを一緒に面白がって、一緒にこだわってくれるギタリストが同じバンドにいるのがすごくうれしくて。なので、マカロニえんぴつのアイデンティティをひとつ挙げるとするなら、ギター好きが2人いるっていうことですね。鍵盤バンドとしてフィーチャーされることが多くて、それももちろん自分たちの個性のひとつなんですけど、ギターの入れ方にもこだわっている自負はあります。

―だからといって、そこを押し出してはいないですよね。それがまたいいんですけど。

そうですね。あくまでも歌が中心なんで。分かる人にだけわかればいいって思ってるところはすごくあります。

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