「本当はもっとドロドロした部分を表現していけたらなと」
―マカロニえんぴつはポップな面が取り上げられがちですけど、僕のなかではポップの皮をかぶったロックバンドという印象です。
ああ、そう捉えてもらえるとめちゃうれしいですね。ロックファンは僕らのことをいろいろ理解してくれるんですけど、ちょっと聴いてみたぐらいの人からは「爽やかだね」みたいなことを言われたりして、「爽やかって一番俺らから遠いんだけどな」って(笑)。メロディがキャッチーでピアノが入ってるからそういう印象になるんだろうなっていうのは理解してるんですけど、本当はもっとドロドロした部分を表現していけたらなと思ってます。
―マカロニえんぴつの音作りは派手ではないですよね。楽器の音を重ねてないし、音圧を重視している感じもしない。それこそ、先ほどはっとりさんがおっしゃったように、ライブがイメージできるサウンドで。
最近はそうですね。
―でも、初期の音源を聴いてもそこまで派手さは感じないですよ。
たしかにギターはダブって(重ねて)ないですね。民生さんの影響で歌はけっこうダブるんですけど、最近は面倒くさくなってきてそれすらしてなくて。レコーディングでそんなに歌わなくなったんですよ。こないだ録った曲も2テイクしか歌ってなくて。散々歌ったあとに1テイク目を聴かせてもらうと、「ああ、これでよかったじゃん!」ってことがよくあって、そこにダブるのはもったいないって思っちゃうんですよ。もちろん、コーラスはダブりますけど。
―過去には四つ打ちを取り入れた時期がありましたね。
たしかに初期の作品に関しては当時のフェス文化を意識してました。四つ打ちの速い曲が何曲かないとダメだと思い込んでたし、周りからもそう言われて。でも、『s.i.n』(2017年2月リリース)から遊び始めて、『CHOSYOKU』(2017年12月リリース)でタガが外れました。
―それはなぜ。
無理してやってるとファンにバレるし、メンバーも楽しそうじゃなくなってくるんですよ。それはそもそも自分がそんなに面白がって音楽をやってないからなんだろうなって気づいたので、『s.i.n』に入ってる「まなざし」でクイーンのオマージュを入れてみたらレコーディングが盛り上がったんですよ。それがきっかけで自分の好きなものを取り入れることにリミットをかけないようになりました。なので、『CHOSYOKU』の「春の嵐」では思いっきり(オアシスの)「WHATEVER」のオマージュをやってみたり。そういうことをだんだん周りから評価していただけるようになったので、そこからは流行りを意識してないですね。ただ、趣味に走りすぎると自己満足になってしまうので、そのバランスを探すのが好きです。
―今、はっとりさんが思うベストなバランスってどこなんですか。
曲によってですね。まだリリース前の曲なんですけど、そこではかなりダサめなことをやってるし……だから、今はバランスすら意識できなくなってる状態なのかもしれない(笑)。だって、よっちゃんがアウトロで16小節ぐらい速弾きしてるんですよ? でも、ケラケラ笑いながら、「これはダサい! 絶対に入れよう!」って。「ハードロック畑出身の俺たちにとって、ダサいは褒め言葉だったはずじゃないか!」って。思わず笑ってしまうようなことをマジな顔してやるからロックはカッコいい。
―ああ、そうですよね。
他にも、どんどんテンポが上がって、最後は弾けないぐらい速くなる曲があったり。
―UNICORNの「人生は上々だ」みたいじゃないですか。
あの曲はキーがどんどん上がっていくけど、それと同じことをやったら丸パクリになっちゃうからテンポを上げようってことで。結果、面白い曲になりました。だから、今はバランスは二の次で、「楽しいことはなんだ?」っていうことを探るフェイズに入ろうとしてますね。