miletが語る歌の新境地、アジアでの経験とKing Gnuに思うこと

生きることと死ぬことについて考えた

―EPの話を続けると、2曲目の「Tell me」はFGOのスペシャルテーマソング。こちらは音もリリックも、どこか厳かでアンニュイなムードが漂っている印象です。

milet:もともとあった曲をFGOに寄り添って作り直したもので、最初はラブソングっぽい曲だったんですけど、歌詞を全取っ替えすることでもっと広い意味での愛の歌になった気がします。生きることとか死ぬこと、恋愛だけではない部分で伝えられる曲になったなって……悲しい曲になっちゃった(笑)。それはそれでいいんだけど! ただ歌ってても、どこか寂しくなっちゃう歌になっちゃったかな。

―それは「なっちゃった」って感じなんですか。そうしようと思ったんじゃなくて?

milet:うーん。歌うと感情移入しすぎちゃうところもあるんですけど、ここにいたくてもいることができなくなってしまった人の気持ちを歌ってたりするので、それを思うと寂しくなりますね。でも、オケやサウンドの力強さに助けられて、なんとか立ち直っている感じもします。



―でも実際、「Prover」と「Tell me」の2曲は、人間の深い部分を描こうとしているのがよくわかります。それってFGOの世界観に由来するものとは別に、miletさんのパーソナルな部分から湧き出たものでもあるんですかね?

milet:それはありますね! 自分はなんで生きてるんだろう、なんで死なないんだろうとか、ずっと思いながら生きてる節はあって。「Prover」と「Tell me」を作るのは、そのことに改めて向き合いながら考える機会でもあった気がします。

―というと?

milet:生きていれば、いつかは絶対に死が訪れる。それが怖いと思うこともあれば、逆に死にたいって思うこともある。そういう意味で、人間ってすごくわがままじゃないですか。そこを自分なりにしっかり考えたときに、死ぬことについて考えることは、生きることを考えることになるなって思ったんです。

―そういえば昨年、「自分の存在を証明するのは自分、そんな意味を込めてつけた『Prover』のメッセージがみなさんの心に響きますように」とツイートしていましたよね。これも今の話と繋がりそうですか?

milet:そうですね。自分自身の存在もそうだし、死んだ人とかいなくなった人の存在も、近くにいた人が証明する材料の一つになるじゃないですか。だから死んでても生きてるなっていうのは思う。人だけじゃないですよね。今までのあらゆる事象――戦争もそうだし、3.11もそうだけど、これまで起きたことすべて、生きてる人間が受け継いでいかなきゃいけないものだろうなっていうのは、作りながら思いました。

―たとえ肉体が滅びても、誰かが“そこにいたこと”を記憶していれば、その人の存在はいつまでも生き続ける。

milet:うんうん。それが永遠なのかなって思いました。

―「Tell me」でも、“永遠が終わって 全部消えても/でも残っているの your touch”と歌ってますよね。

milet:今までいろんな曲で「永遠」って言葉を使ってきたけど、永遠って肉体的には絶対にありえないじゃないですか。でも、人と人とが繋がることで永遠は生まれると思ったから、自分のなかで永遠の定義がしっくりきた感じがします。

―今の話を踏まえてこの2曲を聴くと、また違った発見がありそうです。

milet:終わりのない曲だなと思いますね。

―そんなメッセージが込められた「Prover」と「Tell me」は、誰のために作られた曲なんですかね?

milet:もちろん、まずはFGOに捧げた曲です。でも、この2曲はきっと、誰の心にも響くだろうなって制作中から思ってました。そう言いながら、現代を生きてる人たちが、この壮大な曲のどこに共感するんだろうって考えてしまう瞬間もあるんですけど……。街と雰囲気が違うじゃないですか。メトロに乗ったりしながら「Prover」聴くかなーって。ちょっと異質な、異世界感のある曲だし。

でも、どこかでシンパシーを感じられる曲だと思うし、「Prover」みたいな曲をいいと思える人は、それだけ心に広さがある気がするんですよ。自分のなかに深い世界をもっていて、いろんな感情を取り込む能力があるんだろうなって。そう思える人たちに聴いてもらえるというのは、共感者が増えてる感じがして嬉しいです。

―まだ見ぬ“あなた”に捧げられた曲でもあると。こういう曲が求められる世の中は、そうじゃない世の中より絶対にいいと思いますよ。

milet:ね、夢みたいじゃないですか。

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE