レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、ダフ屋による不正転売との戦い

一部のチケットの価格を高めに設定することでダフ屋やチケット転売に対抗するレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン。 (Photo by Kevin Nixon/Classic Rock Magazine/Shutterstock )

レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンは、一部のライブチケットの価格を高めに設定することでダフ屋や転売行為に対抗しようとしている。高めに設定されたチケットの収益は、慈善団体に寄付される。

レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン(通称:レイジ)の2020年の再結成ツアーのチケットがソールドアウト確実であること、そしてたくさんのダフ屋を惹きつけることは誰もがわかっていた。チケットマスター(訳注:米チケット販売会社)のサーバー混雑による果てしない接続不能状態、転売市場で高騰し続けるチケット価格、バンド自体が怒りをぶつけるべき組織(=マシン)に成り果ててしまった、という皮肉たっぷりのファンのツイートなど、米現地時間2月13日の朝に2011年振りとなるレイジのライブチケットがようやく発売された時から結末は見えていた。

実際、レイジ側もこうしたシナリオを予測していた。だからこそ、バンドは批判の矛先に立ち、できる限りの策を講じた。ツアーチケットが発売される前の2月10日の週からダフ屋は予想価格などのチケット情報をネットに掲載しはじめ、ギタリストのトム・モレロはレイジの公式サイトからチケットを購入するように、とファンにTwitterで注意を促していた。そして正規のチケットが13日に発売されるやいなや、レイジはInstagramで声明を発表し、ダフ屋に対抗するための計画を細かく説明すると同時にワケあって高めに設定した一部のチケットの収益を慈善団体に寄付すると宣言した。

「俺たちがツアーの開催を発表して以来、ダフ屋やチケット仲介者がサイトに偽チケットを掲載し続けている」とレイジはコメントした。「俺たちは、略奪的なダフ屋からできる限りファンを守りたいと思っている。それと同時に、各都市で俺たちが支持している慈善団体や活動家団体のために多大な寄付を集めたいんだ」

レイジは、ダフ屋が全公演の座席の最大50%を買い占めていると指摘し、大量のチケットがファン以外の人間の手に最終的に渡ってしまうことを全力で阻止すると宣言した。ダフ屋との戦いで完全勝利を収めるのは難しいかもしれないが、レイジにも考えがある。座席の10%をランダムに押さえては、正規価格よりは高いものの、ダフ屋から買うよりは安い価格で販売することでダフ屋や転売行為を阻もうというのだ。

「俺たちは、10%のチケットから得た全収益を各都市の慈善団体と活動家団体に寄付する」とバンドは表明した。「こうした対策を通じてファンがしかるべき価値のチケットを手に入れ、暴利的な転売市場に大きなダメージを与えられると信じている。俺たちだってダフ屋行為は大嫌いだ。だから、こうした行為と戦う方法を今後もずっと考えていく」

レイジはすでに最初の3公演——米テキサス州エルパソ、ニューメキシコ州ラスクルーセス、アリゾナ州グレンデール——のチケットの収益を移民の人権保護団体に寄付すると決めている。その他の公演の収益の寄付先はまだ公表されていない。米ローリングストーン誌はレイジの代理人とチケットマスターの代理人にコメントを求めたが、どちらも応じていない。

ダフ屋のチケットの高さを嘆くファンがいる一方、ベースとなる125ドル(およそ1万4000円)のチケットに対しても一部のファンから批判の声があがっている。情報元である業界関係者曰く、この125ドルという価格は全座席——アリーナからスタンドの最上階まで——共通で、手数料も高くて20ドル程度とのこと。さらに、125ドルという価格は、2020年のビッグアーティストにはかなり妥当な設定だ。たとえば、2月末にワシントンD.C.のキャピタル・ワン・アリーナで行われるポスト・マローンのライブのスタンド最上階の席は129.50ドル(手数料別)に設定されており、4月にテネシー州ナッシュビルのブリヂストン・アリーナで行われるパール・ジャムのライブのもっとも安い席は109ドルで、チケットはソールドアウトしている。2月にニューヨーク・シティのマディソン・スクエア・ガーデン(MSG)で行われるイーグルスの『ホテル・カリフォルニア』の全曲再現ツアーにいたっては、ベースが149ドル(手数料別)だ。

たしかに、ダフ屋のチケット価格を引き下げようというレイジの計画は、うまくいっているようだ。現時点で寄付の対象となる8月11日のMSG公演のアリーナ席セクションFのチケットマスター価格が731ドル(およそ8万円)+手数料なのに対し、チケット売買サービスサイトStubHubではわずか279ドル(およそ3万1000円)。同じく寄付の対象となるセクション223からスタンド最上階の座席がチケットマスターでは一様に331ドル(およそ3万6000円)であるのに対し、StubHubでは138ドル(およそ1万5000円)——ベースの125ドルより少し高いくらいだ。

Translated by Shoko Natori

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