エアロスミス、児童虐待をテーマにした人気曲「Janie's Got a Gun」を振り返る

エアロスミスのスティーヴン・タイラー

エアロスミスが「Love in an Elevator」などの大ブレイクの最中に発表した1989年のヒット曲は、児童虐待とその復讐について歌われている。

30年前の2月、エアロスミスの「Janie’s Got a Gun」がビルボードチャートで4位にまで上昇した――ポーラ・アブドゥルの「Opposites Attract」、セダクションの「Two to Make It Right」、そしてロッド・スチュアートの「Downtown Train」に次ぐ順位である。このバンドには珍しく暗い雰囲気のシングルで、テーマは近親相姦、児童虐待、復讐殺人である。

彼らはこの時期、デズモンド・チャイルドやジム・ヴァランスといった外部の作曲家と多くの仕事をこなしていたが、スティーヴン・タイラーとベーシストのトム・ハミルトンは自ら楽曲を書いていた。タイム・マガジン誌のアメリカにおける銃暴力についての巻頭特集と、ニュースウィーク紙の裕福な郊外の家庭における児童虐待の記事にインスパイアされたとスティーブン・タイラーは語っている。それらは彼に、少女ジェニーが性的虐待を加えていた父を殺す物語を書かせた。

元のヴァージョンには「彼は小さな娘をレイプした/男は狂っていたに違いない」という歌詞があったが、「彼は小さな娘に乱暴をはたらいた/男は狂っていたに違いない」に変更されたためラジオやMTVでの放送が可能になった。歌詞の改変が行なわれた箇所は他にもあり、「彼女は彼を落ち着かせて、銃弾を頭に撃ち込まなければいけなかった」が「彼女は彼を落ち着かせて、どしゃ降りの中に置いていかなければならなかった」に変更された。

こうした変更点がありながらも、この曲は児童虐待に冷ややかな目を向けている。そしてミュージックビデオでメッセージを伝えるために、監督に『エイリアン3』、『セブン』、『ザ・ゲーム』といった映画で成功を収める前のデヴィッド・フィンチャーを雇った。ビデオではバンドの演奏シーンのカットと殺人事件を調査する警察官がジェニーの人生をフラッシュバックで視るシーンが切り換わる。

その前のシングル「Love in an Elevator」はスティーヴン・タイラーがエレベーター内でオーラル・セックスを受ける話だ。このことから、「Janie’s Got a Gun」でどれほど従来の路線かけ離れたことをしたかがわかるだろう。この曲はMTVで繰り返し放映されラジオではトップ40に昇った。その後の9年間、「I Don’t Want to Miss a Thing」の発表までそれ以上のヒットはみられない。

その後、エアロスミスの本格的なヒットは2001年の「Jaded」までないが、それが小さな棘となり彼らを巡業へ向かわせた。近頃バンドはドラマーのジョーイ・クレイマーのドロドロの脱退劇――アメリカの裁判所をも巻き込み、警備はリハーサルに彼を入れないようにした――の後に再び加入させた。今のところ彼らの背景にある事情はそのようなもので、バンドは9月までラスベガスとヨーロッパで公演を行なう。「Janie’s Got a Gun」を聴けるという期待はしない方がいい。理由はどうあれ、ラスベガスでの興行の中でその曲を披露したのは1度だけなのだから。

Tlanslated by Sakuno Seike

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