ビリー・ジョーが語る、人生を形作ったグリーン・デイの15曲

ビリー・ジョー・アームストロング、ニューヨークのWebster Hallにて。2016年10月8日撮影(Photo by Ryan Pfluger/The New York Times/Redux)


4.「SHE」
『ドゥーキー』(1994年)

Catherine McGann/Getty Images

昔アマンダっていう、カリフォルニアの学生だった女の子と付き合ってたんだ。俺はフェミニズムについて、彼女から多くのことを教わった。あの頃彼女と出会えたのはすごく幸運だったと思う。彼女は高校を中退した世間知らずのガキだった俺に、長い間女性たちがモノとして扱われてきたってことを教えてくれた。この曲は彼女へのラブソングのつもりで書いたんだけど、彼女の考え方にインスパイアされた部分もある。「耳から血を流すまで俺の耳元で叫んでくれ」っていう歌詞は、話を聞くっていう俺の意思表示みたいなものなんだ。どんな活動に対しても、相手の意見に耳を傾けるっていうのが最初のステップだと思う。

「SHE」は何かを理解することについての曲で、歌ってるとすごく気分が良くなってくるんだ。不要なものを削ぎ落とした、3コードのシンプルな構成のこの曲を、俺はすごく誇りに思ってる。隠れた名曲だと自負してるよ。シングルカットされたわけじゃないけど、それ単体で成立するだけの存在感がある。そういう曲ってあんまりないんだよ。




5.「ロングヴュー」
『ドゥーキー』(1994年)

Ebet Roberts/Getty Images

プリテンダーズの「メッセージ・オブ・ラヴ」って曲が大好きで、俺もああいうのを書きたいって思ったんだけど、いいベースラインが浮かばなかった。当時俺たちはみんなカリフォルニアのリッチモンドに住んでて、ある日俺は1人で映画を観にいったんだけど、その間に他のメンバーはウチでアシッドをやってたんだ。俺が帰宅すると、ベースを抱えたマイクがキッチンの床に座り込んでた。キマってるのが一目でわかったけど、やつは「すげぇいいのが浮かんだぜ! バッチリだ」って言って、あの曲のベースラインを弾いてみせた。その時は正直どう判断していいかわからなかったよ。アシッドをキメたまま考えたフレーズを、やつが後で思い出せるかどうか怪しかったからね。でも翌日にスタジオでやってみたら、見事にハマったんだよ。

歌詞は典型的な負け犬の人生を描いてる。テレビを観て、オナニーして、虚しい気分になるっていうさ。あの頃、俺は大きな不安を抱えてた。将来の展望はゼロだし、彼女もいなかった。Adrienneと知り合ったのは90年頃だったけど、付き合い始めたのは94年とかその辺だったからね。バンドはメジャーレーベルと契約したばかりで、アンダーグラウンド時代から応援してくれたやつらからは批判されたりもしてた。いろんなことが自分の手に負えなくなっていくように思えて、のるかそるかの大博打に出ちまったって感じてた。この曲はじっくり聴いてみると、すごく変わってるってことに気づくと思う。あんな風にスウィングするリズムや、あれだけのエネルギーのあるフックを作れるバンドは他にいなかった。グランジはもうダサいと見なされていたし、もともと俺たちはもっとハードでアッパーなバンドだったから。この曲はすごく踊れるから、ライブではいつも大盛り上がりだったよ。




6.「ブレイン・シチュー」
『インソムニアック』(1995年)

Niels Van Iperen/Getty Images

この曲はなかなかのダークホースだね。当時はいくつかのレコーディング機材を新たに導入したばかりで、それを色々試してる時にこの曲のリフを思いついたんだ。「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」みたいな、ビートルズのハードめな曲っぽくて気に入った。メタンフェタミンをやったせいで眠れなくて一晩中起きてる、そういうことを歌ってる。当時のパンクシーンにはそういう風潮があって、俺自身もやってた。あれは悪魔のクスリさ。

当時の状況に、俺は正直ビビってた。俺はかなり真面目なソングライターでミュージシャンなんだけど、『ドゥーキー』が史上最も売れたポップスのアルバムのひとつになりつつあった時、俺は自分にこう言い聞かせてた。「俺はロッカーだ。俺はパンクロッカーなんだ。ポップスターなんかになることよりも、俺にはそれが大切なんだ」ってね。この曲にはそういう思いが表れてる。

あの頃は他にもいろんな変化が起きてた。俺は結婚し、23歳にして父親になり、気に登って俺ん家の中を覗こうとするような輩が現れ始めた。ロックスターってやつになることの代償を思い知らされた時期だったね。自分の行動がもたらしたものを、自らコントロールすることはできないんだよ。俺はこの曲で、グリーン・デイ のより醜い部分を描こうとしたんだ。


Translated by Masaaki Yoshida

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE