不注意? 落ち着きがない? 周囲に求められるADHDという特性の理解

また、人間関係全般にも通じることかもしれませんが、「あまり完璧を求めすぎない」ことも大切です。ADHDの場合ふたつのことを両立して対応することが難しいという特性もあります。例えば、「時間を守ること」と「結果を出すこと」の両立が難しい、ということがあります。それから、一定の姿勢で人の話を聴くことが苦手という場合があります。これは「良い姿勢でいること」と「話を聴くこと」の両立が難しいのです。実際、姿勢が悪くても実はむしろ話に集中しているという可能性があります。これらの場合、優先すべきことはどちらでしょうか? もちろん時と場合にもよるでしょうが、「結果を出すこと」や「話を聴くこと」の方を優先すべき場合も少なくないと思います。もしそうならば、時間を守れなかったり、良い姿勢を保てなかったりしたミスを咎めるよりも、優先事項が達成されていることを評価すべきです。そもそも人間は誰でも必ずミスをおかします。「ミスは必ず起きるものだ」と考えておき、その上でどうするのが良いのかを考えておくことも大切なことだと思います。また、ふたつのことを同時に並行して行なうことが難しいのですから、ADHDの方と一緒に作業するときなどは、業務に関係ない雑談等は控えた方が良いでしょう。本人に悪気がなくても、注意が逸れてしまい、不注意や衝動的な行動を誘発してしまうことがあります。

これまでも言ってきましたが、人間にはそれぞれ多様な特性があるということをまず認識すること、そして、その多様な特性に即して、完璧を求めすぎない行動や目標設定を心がけ、個人を無理矢理社会や多数派の都合、建前に合わせようとしてはいないか気をつけて環境の調整をはかっていくこと、そうやって、皆が自分を否定的に捉えることなく自信を持って生きていけるようなやり方をその都度考えていくことが大切なのだと思います。



<書籍情報>




手島将彦
『なぜアーティストは壊れやすいのか? 音楽業界から学ぶカウンセリング入門』

発売元:SW
発売日:2019年9月20日(金)
224ページ ソフトカバー並製
本体定価:1500円(税抜)
https://www.amazon.co.jp/dp/4909877029

本田秀夫(精神科医)コメント
個性的であることが評価される一方で、産業として成立することも求められるアーティストたち。すぐれた作品を出す一方で、私生活ではさまざまな苦悩を経験する人も多い。この本は、個性を生かしながら生活上の問題の解決をはかるためのカウンセリングについて書かれている。アーティスト/音楽学校教師/産業カウンセラーの顔をもつ手島将彦氏による、説得力のある論考である。

手島将彦
ミュージシャンとしてデビュー後、音楽系専門学校で新人開発を担当。2000年代には年間100本以上のライブを観て、自らマンスリー・ライヴ・イベントを主催し、数々のアーティストを育成・輩出する。また、2016年には『なぜアーティストは生きづらいのか~個性的すぎる才能の活かし方』(リットーミュージック)を精神科医の本田秀夫氏と共著で出版。Amazonの音楽一般分野で1位を獲得するなど、大きな反響を得る。保育士資格保持者であり、産業カウンセラーでもある。

Official HP
https://teshimamasahiko.com/




Rolling Stone Japan 編集部

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