バンド・ブランド戦略で永遠に生き続けるクラシック・ロック

2010年代は、フレディ・マーキュリーからエルトン・ジョンまで、あらゆるアーティストが永遠に生き続けるブランドとなった。 Alex Bailey; The Bizarre World of Zappa; Valentin Flauraud/EPA-EFE/Shutterstock

2010年代も、音楽史に残るアイコンたちがこの世を去ったり引退していってしまったが、彼らの人気は衰えていない。映画『ボヘミアン・ラプソディ』をはじめとする伝記映画やホログラムなど、様々な方法で復活を遂げている。

「今クイーンとして活動していると、まるで昔に戻ったような気がする。バンドは全盛期と同じ位ビッグになっている」とブライアン・メイは、2017年にローリングストーン誌に語っている。映画『ボヘミアン・ラプソディ』が公開される1年前のことだ。同伝記映画はその後、ポップカルチャーの大ヒット作となる。しかしフロントマンのフレディ・マーキュリーの死から20数年が経ち、ヒット映画の公開前の時点でも、ギタリストのメイは自分たちが世界のトップにいると感じていた。「アリーナでプレイできる自分たちを誇らしく思っているし、幸運でもある。何せこれまでに僕らがやってきたどのコンサートよりもスケールが大きくなっているんだからね。」

ジム・モリソン、ジャニス・ジョプリン、ジミ・ヘンドリックス同様、マーキュリーも死後さらに名を揚げた。ただしマーキュリーの場合は、それら先輩アーティストとは違った形で死後のレガシーが作り上げられている。彼自身とクイーンの一員として作った彼の作品が、芸術的にますます盛り上がるエネルギー源として、レガシーを形成するプラットフォームになっている。例えば映画作品賞を受賞した大ヒット作『ボヘミアン・ラプソディ』や、マーキュリーの代わりにアダム・ランバートが参加したクイーンのアリーナツアー、そしてさまざまなリイシューやアーカイヴのリリースなどがそうだ。『ボヘミアン・ラプソディ』は全世界で10億ドル近い興行収入を記録し、クイーンの楽曲のストリーミング回数は3倍以上に増えた。さらにYouTube上のMV「Bohemian Rhapsody」の再生回数は、10億回を超えた。2010年代に差し掛かるとクイーンは、かつての姿を取り戻した。2008年にリリースされた最新のスタジオアルバム『The Cosmos Rocks』は元バッド・カンパニーのポール・ロジャースがヴォーカルを務め、かろうじてトップ50に入る程度だった。しかしそれから10年後、クイーンは再びロック界で最も儲けるバンドの仲間に加わったのだ。

2010年にクイーンが移籍したユニバーサル・ミュージック・グループ傘下のUmeにとって、バンドの成功は必然といえる。Umeでは、5年先のバンドの姿を描いていた。ただ、どの程度ビッグになるかは未知だった。「映画がヒットする前から、私たちは大きな成功を確信していた。なぜなら彼らの音楽は皆に愛され、受け入れられていたからだ」と、Umeでコンテンツ制作と国際マーケティングを担当するアンドリュー・ドー副社長は言う。「本格的なキャンペーンに入ると、私たちは予算をもっと注ぎ込んで作品をどんどん紹介し、人々に映画を知ってもらう努力をするだけだった」。

クイーンの最近の成功に劣らず驚きなのは、彼らだけが決して特別な例ではないということだ。この10年は以前にも増して多くのアイコン的な有名ミュージシャンがこの世を去った。そして次の10年は、80年代を飾ったベビーブーマー世代のクラシックロッカーたちを中心に、さらに多くのアイコン的ミュージシャンとの永遠の別れが訪れるだろう。しかしアーティスト本人と彼らの作品は、最新技術によって死後も生き続けるのだ。時は刻々と進み、クラシックロックはどんどん古くなっていくかもしれない。しかしバンドをブランド化することで、クラシックロックのミュージシャンが永遠に生き続ける道を見出したのだ。

Translated by Smokva Tokyo

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