リーガルリリー、言葉とメロディが生み出す「魔法」の秘密

言葉に合わせてメロディが動いている

─リーガルリリーの楽曲って、ひょっとして歌詞から先に書いていることが多いんじゃないかなと思ったんです。特にAメロの譜割がリフレインにはなっていなくて、言葉に合わせてメロディが動いている。そこが、いい意味で「洋楽っぽい」と感じるのかなと。

たかはし:ああ、確かに! 今作は歌詞から書いている曲が多い気がします。まさにAメロは歌詞から作っていますね。英語は日本語に比べてなんでもメロディにしやすい気がして、「羨ましいな」と思う時もあります(笑)。

─その歌詞についてもお聞きします。映画『惡の華』主題歌として書き下ろした「ハナヒカリ」の中の、“飛び交った戦闘機”や“戦前の兵隊さん”というフレーズをはじめ、「そらめカナ」の“爆心地”、「林檎の花束」の“前線”、「1997」の“催涙弾”など、戦争を想起させる表現が頻繁に使われています。

たかはし:単に戦争に対して「反対」とか「賛成」とかそういうことを訴えたいのではなく、近くの大切な人が、怖い場所へ向かわないでほしいという気持ちを言葉にしたかったんです。そうやってみんなに大切な人がいて、それだけで幸せだと、それ以上のことは望まないと思えたら、戦争なんて起きないはずなのになって。

─そういう思いは、小さい頃から戦争の絵本を読んでもらったことも影響していますか?

たかはし:していると思います。例えば、どれだけ怖い「おばけ」の本を読んでも、「怖いなあ」とは思わなかったんですよ。子供ながらに脅かそうとしているのが見えてしまったというか。でも戦争の本は、悲しいし怖いし、そういう感情を一番強く揺さぶられたので。それがずっと今も残っているのだと思います。

─ちなみに「ハナヒカリ」という言葉は、ほのかさんの造語ですか?

たかはし:そうです。私の中では花火をイメージしていて。花火っていわば爆弾の一種なのに、綺麗な花を咲かせるっていう。そこが「惡の華」のタイトルと通じるなと思って付けました。

─「そらめカナ」で描かれている歌詞の世界観は、こうの史代さんの漫画『この世界の片隅に』にも通じる気がしました。こうのさんの作品も、「戦争反対」を声高に訴えるのではなく戦争中に人々がどんな暮らしをしていたかを描くことで、読み手が戦争について考察を深めるきっかけを与えてくれていますよね。

たかはし:うん、まさにそうですね。実は3日くらい前に『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』を観に行ったんです。やはり、とてもいい作品でした。

─いつも歌詞はどのように思いつくのですか?

たかはし:考えながら組み立てていくのではなくて、自分の心の一番上にある感情をそのまま貼り付けていくというか。最初に絵を思い浮かべて、それについて湧き出る感情をうわーって書いていくだけなので、それで抽象的になっちゃうのかなと思っています。言葉どうしの辻褄を合わせようとはせず、聴き手の解釈に任せている部分が多いんですよね。

─「嬉しい」「悲しい」と言った言葉の間にあるような、うまく言葉にできない感情を、歌詞とメロディを組み合わせることで表現しているというか。

たかはし:はい、そうだと思います。

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