『私は「うつ依存症」の女』著者、エリザベス・ワーツェル氏の一生

止まない非難の声

司法試験に合格することはなかったものの、彼女は2008年から2012年まで、ニューヨーク市の法律事務所Boies Schiller Flexner LLPでケースマネージャー兼プロジェクトディレクターとしてフルタイムで勤務した。ワーツェル氏は物議を醸している弁護士デイヴィッド・ボイス氏をある種の恩師と見なしていて、同氏を「凄腕の弁護士であるだけでなく、最も素晴らしい人物」と呼んだ。2017年、ボイス氏は民間諜報企業を雇って依頼人のハーヴェイ・ワインスタインの被害者を監視させていたことを暴露され、評判は失墜した。

Boies Schiller Flexner LLP退職後、ワーツェル氏は再び原点に戻った。「ずっとずっと、自分は文章を書くべきだと思っていた」と、彼女は2012年に法律関係のブログAbove the Lawに語っている。激しく、内面をえぐるようなトーンは必ずしも万人に受けたわけではない。2012年ハーパーズ・バザー誌に掲載された記事は、大勢のフェミニストブロガーの怒りを買った。「見た目のよさがフェミニズムでは重要です。リベラルな女性が不健康で不幸せに見える格好をして、その意義への誤解を招くようなことはしないでしょう」

2013年、ワーツェル氏がCut誌に寄稿した歯に衣着せぬ長編エッセイが話題になった。「人生の行きずりの恋」について書いたもので、この中で彼女は45歳まで独身を貫いたことなど、いくつかの人生の選択を悔やんだ。かなり私的で、女性らしさや老いについての物悲しい考察だったが、散漫な文体は大勢の人々から一貫性がなく、支離滅裂だと受け止められ、ネット上で酷評された。「初期の頃のワーツェル氏は自らの言葉で、抑制された恐ろしい慢性うつの存在を鮮やかに、美しく描写していた」と、フェミニストウェブサイトJezebelのトレイシー・イーガン・モリッシー氏は書いている。「残念ながら、今の彼女が心情を綴ってもただひどいだけ」

同じ年、彼女はとある朗読会で、後に夫となるジム・フリード氏と出会った。「僕はいわゆる彼女の前座でした」 付き合い始めてから数カ月後、彼女は彼に『私は「うつ依存症」の女』を1冊プレゼントした。「いかにもエリザベスらしかったですね。『これが私の本。読んでね』って」とフリード氏。「でも、僕は彼女のそういうところが好きだった。だって彼女はそういう人だから」 2人は2015年に結婚した。

作品同様、ワーツェル氏は衝動的で、気分屋で、そして常に自分に正直だった。「彼女は何をやるにしても騒々しかった。決して静かではない」とフリード氏。「爆発、それがエリザベスだった。本人もそれを自負していました。自分がいかに度を越しているか、誇りに思っていました」

Translated by Akiko Kato

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