映画『キャッツ』映画評:この10年で間違いなく最低作品、一体何が起きたのか?

『キャッツ』で風変わりな毛皮姿で跳ねるジェームズ・コーデン(中央)Photo by Universal Pictures

現在公開中の映画『キャッツ』。世界を席巻したブロードウェイミュージカルの金字塔とも言える本作の実写版だ。世間では酷評されているが、ローリングストーン誌の名物映画評論家、ピーター・トラヴァーズによる評価は?

【注:文中にネタバレを想起させる箇所が登場します】

アンドリュー・ロイド=ウェバーによるヒットしたミュージカルをスクリーンに映し出そうとした試みは大惨事となった。これは、あってはならないことだーーー。

2019年の最低映画を探している映画ファンに注目してほしい。最低映画の勝者が決まった。『キャッツ』は誰にも気付かれずに劇場に紛れ込み、2019年最低の作品と簡単に評されている。しかも、ほぼ間違いなくこの10年で最低である。マイケル・ベイ監督の死ぬほど退屈な『トランスフォーマー』のゴミのような3部作さえも足元に及ばない。何が起きたのだろうか?

舞台の『キャッツ』は、アンドリュー・ロイド=ウェバーが音楽を、詩人T・S・エリオットが歌詞を担当し、ブロードウェイから東京まで大ヒットを飛ばし、賞を獲得したのではなかったのか? もちろんそうなのだが、トム・フーパー監督(『英国王のスピーチ』『レ・ミゼラブル』)によるオールスター出演の映画版は酷すぎで、うまくいくはずのことが不幸なことに全て間違った方向に向かっている。最初の予告編が公開されると、SNSでヤジが飛び交った。そして、今回の映画本編は、面白みがなく、内容を毛玉のように消化できず、予告編以上にまったく酷いものだ。

ネコをテーマにした怪しげなハロウィーン・パーティーをほのめかすために撮影スタジオで撮影されたこの映画は、舞台と同じく、人々にこよなく愛されたエリオットの1939年の詩集『キャッツ ポッサムおじさんの実用猫百科』に基づいている。物語は、ロンドンのある一夜、ジェリクルキャッツと呼ばれるゴミ捨て場にたむろしている猫が、オールドデュトロノミー(ジュディ・デンチが演じるが、デイムの称号を持つゆえに、彼女はもっとふさわしい役を受けるべきだった)による審査員長のタレントショーを行い、自分の価値を証明するというものだ。そのショーで優勝したらどうなるか? 選ばれた猫は、ヘビサイド層として知られる猫の天国に昇り、おそらく誰もこの映画を座って強制的に見ることのない、より良い人生に生まれ変わる。

才能が映画全体に渡って悪用されている。サー・イアン・マッケランは失われた若き日々を歌う演劇猫ガス役を演じ、イドリス・エルバは堕落のモンスター、マキャヴィティ役を、そして、かわいそうなことにテイラー・スウィフトはマキャヴィティの共犯者ボンバルリーナを演じている。フーパーは、俳優たちを息が詰まりそうで、生気のない映画の泡の中に閉じ込めている。そこでは、役者たちは息抜きできる余裕も、キャラクターを作り上げる余裕もない。代わりに、フーパーが判断を誤って進めてしまったことは、俳優たちをデジタルの毛皮と突飛なメイクで覆ってしまったことだ。

Translated by Koh Riverfield

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