中島みゆきは「戦友」 プロデューサー/アレンジャーの瀬尾一三が語る

中島みゆきとの仕事においての「プレッシャー」とは?

田家:1992年に発売された。28枚目のシングルでドラマ『親愛なる者へ』の主題歌で「浅い眠り」でした。初のミリオン超えということですが、まあ一旦セールスのことは置いておいて。

瀬尾:置いておいて下さい(笑)。

田家:でもこういうヒットが出ると、どこかで後々の意識が影響されるっていうことはないんでしょうか。それともそういう意識から排除するんでしょうか。

瀬尾:排除することはないですよ。認めてくださることはとても嬉しいと思いますけど、僕の仕事の内容にはあまり変わりはないですよね。考え方には全く変化はなくて、あまり考えてしまうとプレッシャーの方が強く感じてしまって、怖くなって先に進めなくなると思うので。なので、こういうことは、お祝いとしてありがたく受け取って、皆さんに広まったっていうのは嬉しいことだけど、それは僕がやったということではなくて本人の力なので。そこで俺が俺がって言ってしまったところで、先に来るプレッシャーの方が大きくなって大変だと思うので。あくまで第三者的に「あぁ、よかったですね」くらいで終わってますね。

田家:でも中島みゆきさんとの仕事は年々プレッシャーが増してくるわけでしょう?

瀬尾:まあそう言われるとどう答えたらいいか分かんないんですけど、さっきのプレッシャーと対中島さんのプレッシャーっていうのは別物であって、あくまでクリエイティブな前向きなものじゃないですか。「売れました」っていうプレッシャーは不安になるようプレッシャーだけど、中島さんとのプレッシャーはもっと前に進んで行こうっていうもので別物ですね。

田家:プレッシャーの質の問題ですね。セールスは質の問題じゃないですもんね。この徳永さんと出会ったことで自分に何が良かったかをお伺いしましたが、中島みゆきさんと組んだことで始まったこと、やり甲斐ってありますか? 例えば「夜会」が始まって違って見えたとか。

瀬尾:いやー。僕にとっては一番最初に仕事した「涙 - Made in tears-」が始まりなので、それからずっとある意味で戦いですよ(笑)。30年一緒にやってて、ただすれ違っただけですっていうことにはならないじゃないですか。一緒に仕事してきて、音楽業界の中での戦友なので、戦友は裏切らないようにしないといけないし。ずっと戦友でいたいと思うし、向こうがいらないって言うまでは、老兵ながらツアーとかも足手まといにならないようにしましょうお互い、ハイ。

田家:お聴きいただいたのは、1月8日に発売になりました『時代を創った名曲たち 3~瀬尾一三作品集 SUPER digest~』最後の曲、中島みゆきさんで「浅い眠り」でした。『J-POP LEGEND FORUM』瀬尾一三2020年part.2、70年代以降の日本の新しい音楽のアレンジャー・プロデューサーの先駆け瀬尾一三さんに特集する1カ月。今週はPart4『時代を創った名曲たち 3~瀬尾一三作品集 SUPER digest~』後編でした。今流れているのは、竹内まりやさんの「静かな伝説(レジェンド)」です。そして2月10日に『音楽と契約した男 瀬尾一三』という本が発売になります。萩田光雄さん、松任谷正隆さん、山下達郎さん、亀田誠治さんとの対談、そして吉田拓郎さん、中島みゆきさん、中村中さんからの寄稿もありまして。中島みゆきさんはどんなことを寄稿されているんでしょう?

瀬尾:これも僕との出会いの話をしています。

田家:「涙 - Made in tears-」の時のことですか?

瀬尾:いえ、なぜ彼女が僕を選んだか? 一度もお話したことないことだと思うので、是非読んでください。

田家:この本で一番伝えたいこと、感じ取って欲しいことって何でしょう。

瀬尾:僕は別に人生の終盤を迎えた人の自慢話をしようとも、音楽業界での成功のハウツーを語ろうとしてるわけでもないんです。人に知られていない職業の紹介、音楽という業界で昭和・平成・令和を生きてきた一人の職業を通した生き様を感じてくれればと思ってるだけなんで。

田家:プロデュースとは何か、アレンジとは何かの一つの答えやヒントがある?

瀬尾:あるかもしれませんし、ないかもしれません(笑)。お任せいたします。

田家:受け取る人次第でしょうか。そして、『時代を創った名曲たち 3~瀬尾一三作品集 SUPER digest~』なんですが4作目もあるんでしょうか?

瀬尾:いや、もう勘弁して下さい(笑)。

田家:でもみゆきさんのツアーが終わった頃に、スタッフの方からあれもあります、これもありますという提案が出てくるかもしれません。

瀬尾:かもね。

田家:お互い無事にツアーを終えましょう、よろしくお願いいたします。

瀬尾;こちらこそよろしくお願いいたします。

田家:ありがとうございました!


<INFORMATION>

瀬尾一三
1969年フォークグループ「愚」として活動。1973年ソロシンガーとしてアルバム『獏』を発売。同年に『LIVE`73』を吉田拓郎と共同プロデュース。その後、中島みゆきをはじめ、吉田拓郎、長渕剛、德永英明 他、今作品に収録された日本のポップス、ロックシーンの黎明期から現在まで燦然と光輝くアーティストたちの作品のアレンジ(編曲)やプロデュースを手掛け、中島みゆきにおいてはコンサート、『夜会』『夜会工場』の音楽プロデュースも務めている。2017年、自身の作品集第1弾『「時代を創った名曲たち」~瀬尾一三作品集 SUPER digest~』を発売し、好評を博した。2019年に第2弾、2020年1月に第3弾の発売が決定。その同時期に音楽活動50周年のアーカイブ書籍の発売も予定されている。
https://www.yamahamusic.co.jp/files/34/ymc/seo_superdigest3/?ima=0928#responsive

田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソナリティとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
https://takehideki.exblog.jp

「J-POP LEGEND FORUM」
月 21:00-22:00
音楽評論家・田家秀樹が日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組ずつスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出す1時間。
https://cocolo.jp/service/homepage/index/1210
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